ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「殿下、もしお友達のところに子供が生まれたらどうします?」

ミハイル「もちろん、お祝いに行く!」

ムーン1「ではテストしてみましょう。お友達夫婦に子供が生まれました。」

ミハイル「このたびはごしゅうしょうさまで」

チコ「しょっぱなからこれだ…」

ミハイル「これはつまらない物ですが」

そういって差し出したのは「ご霊前(※)」と書かれた封。

※:御霊前とは通夜・葬式・葬儀に持参するお香典・御香典・不祝儀の表書きの一つです。

ムーン2「ええと…」

ミハイル「可愛い子ですねえ本当にだんな様の子供ですか?」

ムーン2「こらこらこらこら」

ミハイル「赤ちゃんのお年は?」

チコ「歳ったって生まれてからまだ一週間しか」

ミハイル「初七日ですか」

チコ「あの、わかってやってるんじゃないですか?」

ムーン1「まともな挨拶を知ってますか?」

ミハイル「とうぜんだ」

チコ「あいさつの言葉は知ってても、それをいつ使ったらいいかわかってないので、だからおかしな感じになってるのでは」

ムーン2「殿下も意外な弱点があったんだな」

ミハイル「えーいさっきから好き放題いいおって!僕だっていざという時のあいさつくらい心得とるわい!」

チコ「赤ちゃんを抱いた女性に対してひとこと」

ミハイル「どこでひろってきたんです?」

ムーン1「どこが心得てるって?」

ムーン2「ちゃんとあいさつをしことがあるというなら、そのときの事をおしえてほしいものですなぁ」

ミハイル「えーと…」

チコ「病気見舞いの挨拶」

ミハイル「顔色が悪いようだが大丈夫ですか」

チコ「合格祝い」

ミハイル「いやー親御さんがお金持ちでよかった」

ムーン1「使いどころさえ正しければ別におかしなセリフじゃないんだけどね」

ムーン2「頭の中の回路がワヤクチャになってるんだろう」

ミハイル「思い出した!僕もちゃんとしあいさつをして褒められたことがある!」

チコ「えっ、いつ?」

ミハイル「九年前」

ムーン1「そこまでさかのぼらんといかんのですか!!」

ミハイル「まあ聞け。アレは確か九年前僕がまだ二歳のころいとこのアイシャが社交界にデビューするんで呼ばれていった時」

冠婚葬祭のうちの「冠」本来は元服の儀式だがこの場合はミハイルの数多いいとこのひとりアイシャの社交界へのデビューのこと
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