ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

お熊「とにかく対策を講じなくては……おそらく妖怪かなにかが配達員に化けて本来ならよそに届けるべき手紙を無理からうちにもってきてるのよ。」

チコ「ということは?」

お熊「ということはまず配達員をとっつかまえて正体を見極めたうえで何の目的であるいは誰の命令でこんなことをしているのか白状させなくちゃいけないわ。」

マリア「言うわやすしですけどねえ。妖怪相手にそんなことができるでしょうか」

お熊「できるできないじゃなく身を守るためにやらなくちゃならないの。郵便の配達って何時ぐらいかしら」

マリア「毎日一時ごろじゃないですか?」

時計を見ると針は12時50分を指していた。

お熊「そろそろだわ表で待つわよ」

マリア「ああっ、妖怪と対面するのに何の準備もなく…」

お熊「当たって砕けろよ。」

表に出るとちょうど配達員がこちらへ向かってきている。

お熊「ジャストタイミング」

マリア「いきなりモモンガーとかおどかされなきゃいいですが。」

しかし、配達員は手紙を入れることなく店の前を通り過ぎてしまった。

お熊「あらっ?素通り?」

マリア「今日は配達はないみたいですね。といすると、これは怪異が去ったと考えても良いのでは?」

お熊「うーん、うちの怪異がそんな簡単に解決するとは思えないけど」

何気なくポストを開けてみると中からは手紙があふれ出てきた。

マリア「ひのふのみの……64通あります!」

お熊「い、いつの間に!宅配院の手を介さずに直接ポストの中に郵便が!となるとあたしたちが考えていたよりもっと根の深い怪異である可能性が……。」

マリア「ひえ~っ」

お熊は携帯を取りだして電話をかけた。

お熊「もしもし山坂さん、実はこれこれしかじかで!」

転太『手紙で攻撃する妖怪なんて聞いたこともないが。ポストに64通はいっとったというのも早い時間に別の人間が配達したのかもしれん。』

お熊「でも…!」

転太『お前さんのところだから、何が起きても不思議はないがだからといって何でもかんでも怪奇現象と結びつけてはいかんぞ。現実的にはありそうなのは郵便局のコンピューターのミスか、たまたま本局の局長とは顔なじみじゃ。これからいって何が起きてるのか調べてみよう。帰りに報告に行くからまっておれ。』

お熊「と山坂さんはいってるけど」

マリア「専門家ですからね。怪奇な事件と思って出張ったら案外現実的な説明のつくことだったなんて経験が結構あるんじゃないでしょうか。」

お熊「そうかなあ。でも今回の事件には絶対裏があると思うわ。」

マリア「どうしてそう思います?」

お熊「乙女のカンよ」

マリア「えーと……コメントは差し控えさせていただきます。」
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