ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

間違いの手紙が来て次の日

マリア「今日は2通来てました」

お熊「今度こそどっち宛?」

マリア「残念でした」

お熊「は?」

マリア「一通は熊本の銅鑼野久羅夫(どらのきゅらお)さんから茨城の大神乙子(おおかみおとこ)さんへ、もう一通は仙台の半魚仁兵衛(はんぎょじんべえ)さんから米子の不乱軒修多院(ふらんけんしゅたいん)とゆーお寺にあてた手紙です。」

お熊「世の中には大胆不敵なお名前の方がいるものねぇ。それにしても……二日続けて誤配ってどういうことよ」

マリア「またポストに入れてきます。」

さらに次の日、今度はさらに倍の四通の誤配の手紙が届いていました。

お熊「わざとかしら」

マリア「まさかきっと配達員も忙しくて頭がとっちラかってるんですよ。」

さらにさらに次の日はその倍の八通の手紙。

お熊「なんだかだんだん腹が立ってきたわね。」

マリア「まぁまぁ」

さらにさらにさらに次の日には十六通……。

お熊「たいがいにせんかーーー!!」

マリア「腹が立つを通り越して不気味にすらなってきました。」

お熊「文句を言ってやるわ!もしもし郵便局!これこれしかしれかで大迷惑してるのよ!!」

『えー、そんなはずはないんだけどなぁ。』

お熊「現実に起きとるんじゃァーー!」

『わーっわかりました!さっそく職員をやって原因を調査させますです』

お熊「そうしてちょうだい!!」

ところが誰も来ないばかりか翌日には倍々ゲームの三十二通。もうそろそろ郵便受けに入りきらなくなってきました。

マリア「どういうことでしょうか」

お熊「……だめね。何度郵便局に電話しても話し中で通じないわ。昨日はすぐに通じたのに……日中この時間ずっと話し中なんて不自然よ。」

マリア「なんらかの妨害が?」

お熊「そんな感じね。」

マリア「とすると今回の手紙騒動は単なる郵便局のミスなんかではなく」

お熊「いつもの怪奇現象よ」

マリア「よかったですね。」

お熊「えっ、なにが?」

マリア「たいした怪奇でなくてやたらに手紙が届くのは確かにうっとーしいですが別に実害はないわけですから。」

お熊「読みが甘いわよ。おマリちゃん、このまま倍々で手紙が届き続けると3週間後には何通になると思う?」

マリア「そうですね。えーと、数千通ぐらいですか?」

お熊「百万通を超えるわ」

マリア「ひゃくまんっ!?」

お熊「計算すれば簡単にわかるわ。実害がないどころじゃないわよ。何者かが百万通の手紙であたしたち二人を押し潰そうとしてるのよ。」

マリア「たいへんだーー!」
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