ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

『はい』

マリア「もしもし出前をお願いします」

『…はい?』

マリア「配達をお願いします」

『あーはいはいそれではですね。最近電話でお受けするご注文にミスが増えてまして…FAXで送っていただけないでしょうか』

マリア「えーめんどくさいですね。口頭で受けてくださいよ。」

『そうですかあ?FAXの方が確実なんですけどねえ』

マリア「毛ガニおそばに細魚丼です」

『わかりました』

ところが

お熊「30分以内に配達と書いてあるのに40分経っても来ないじゃない」

マリア「変ですね。」

今度はお熊が電話をかけてみる。

お熊「もしもし先ほどお願いしたビストロ温泉ですけど……えっ、そんな注文の電話は受けてない?ちょっと~~」

マリア「おやあ?」

お熊「ああ、いえ、こちらの話です。毛ガニのお蕎麦と細魚丼をお願いします。」

マリア「……」

お熊「どういうこと!?」

マリア「間違えるはずはない。間違えるはずはありませんが、もしかしたら前回、私のミスがとんでもない事件に発展したので今度こそ今度こそ失敗してはいけないという緊張感がかえって指を震わせて一番ちがいを押した可能性が」

お熊「あーもーっ!相手がまた変な奴だったらどうするのどこに繋がったか調べなくちゃ!」

と話しているところで

「おまちどー銀鯉でーす。」

「「はやっ!!」」

食べてみると、毛ガニのエキスを生地に練り込んだお蕎麦も細魚を甘辛くサッと煮つけた丼もことのほかおいしくて食べ終わる頃には二人とも間違い電話の事を完全に忘れていました。

次の日、新聞を取りにいくと手紙が入っていた。

マリア「珍しく手紙が来てました」

お熊「誰から?」

マリア「えーと埼玉県の青い病人さん」

お熊「知らないわね。おマリちゃんの知り合い?」

マリア「私も知りません。宛先人は……えっ、東横堀の小言幸兵衛さま?どうやら間違いです。」

お熊「なんだ」

マリア「どうしたらいいでしょう」

お熊「待って。もしもし郵便局ですか?手紙が間違って配達されたんですが?」

『あ、そうですか。すみません、まことに恐れ入りますが「誤配」と書いたメモを貼ってポストに投函していただけませんか再配達いたしますので』

お熊「ですってさ」

マリア「メモを貼ってポストに入れてきます。」

お熊「はい、いってらっしゃい。」
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