ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「人間が作り上げたものに完璧ということはあり得ない。どこかに盲点が必ずあるはずだ。」

チコ「じゃあ、それを見つけてください。」

ミハイル「いくら僕が天才美少年でもそう簡単にはいかん一晩考えてみる。」

ムーン1「訴訟の用意をしておこう。」

そて、弱ってしまったミハイル。なんとか盗み出さないと国法泥棒の罪でえらい目に遭わされる。

ミハイルは一生懸命考えました。自分の身を守るためですから当然ですが、しかしやがて夜も更けてくる。

ミハイル「……ウトウト、ハッ!?わーっいかんいかん!真剣に考えようとするとかえって眠くなってしまう!」

試験勉強の時なんか普段より眠くなりますね。あの原理です。

そんな眠気と戦い、ついに夜もあけて……。

チコ「お疲れみたいですね。」

ミハイル「徹夜明けで少しボーっとしてはいるが、計画はできたぞ。」

チコ「大丈夫ですか?目の下にクマができてますよ」

ミハイル「大丈夫だ。ぬかりはない……っが、念のために確認するが博物館の中にトイレは有るだろうな?」

チコ「はあ?そりゃもちろん。」

ミハイル「レッドスターが乗ってる台はどれくらいの精度で重量の変化をキャッチできるのだ。」

ムーン1「千分の一グラム単位です。」

ミハイル「タバコの灰を落としても反応するなカット後のレッドスターの正確な重量は?」

ムーン2「一六四・八八二三」

ミハイル「よし、必要な装置ももうできているから、早速乗り込むとしよう。」



ー大英博物館ー

大英博物館は平日にもかかわらず大勢の人でにぎわっていた。

青年「いやー、すごい人出だなー。」

小柄の少女「おばあちゃん体の調子はどう?」

老婆「ありがとう。平気ですよ。いい孫をもってあたしゃ幸せだよ。」

車いすに乗ってブランケットなどで身を包んだ老婆を押しながら美術館を巡る家族。青年に変装したムーン1とそのままのチコ、そして老婆になっているのがミハイルだ。

青年「やだな止してよ。おばあちゃん。」

展示されたレッドスターの前で朗らかに会話をしつつ、ミハイルの作戦が実行される。

少女「えっ、なあにおばあちゃんお手洗い?」

青年「あっちにある僕はここでまってるよ。」

ムーン1を待たせて女子トイレへと向かい中に誰もいないことを確認すると、ドアに清掃中の札を貼りつけた。

車いすに座っていた老婆の身体の中ほどから横に二つに分かれて中からミハイルが飛び出した。

チコ「殿下!ホース!」

ダミー老婆の中からホースを引っ張りだしてミハイルに渡すと水道につなげて水を流しだす。

その間にブランケットをどけて下に隠してあった細かくバラした装置なども取りだしていく。
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