ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ムーン1「珍しく殿下が国王としての自覚にめざめたんだ!及ばずながらわれわれも力の限りお手伝い申し上げる!」

ムーン2「大英博物館の平面図を手に入れろ!警備員の数と電子警備機械の種類!逃走経路の確認も忘れるな!」

そして……

ムーン1「殿下ー!」

ミハイル「むっ、調査は進んでるか!」

ムーン1「諦めましょう!」

ミハイル「なんで?!」

チコ「ものすごい警備体制なんですよ。」

ムーン1「こんなところに忍び込むくらいなら素直に刑務所に入れてもらった方が手間が省けて楽ですよ!」

ムーン2「それくらい確実に捕まるだろうと思われるほど厳重な警備なんです!」

チコ「やはりここは地道に訴訟を起こして…」

ミハイル「そんなことさせてたまるか!」

チコ「え?」

ミハイル「男が盗み出すと決めたんだなんとしても盗み出すぞ!やりとげるぞ!どんなスゴイ警戒網をしているか知らないが所詮は人間の考えたこと!同じ人間が裏をかけない道理はない!」

ムーン1「なーるほど」

ミハイル「納得したか」

ムーン1「同じ人間のわれわれには不可能なことでも殿下ならやれるかもしれない。」

ミハイル「そういうことだ。……ちょっと待て」

チコ「はい、これが調査報告書です。見てください。」

ミハイルは渡された紙の束に目を通す。

ミハイル「ふーむ………………ちょっとトイレ」

チコ「逃げる気ですか?」

ミハイル「どこの物好きが、たかが博物館にこんな厳重な警備を施したんだ!!」

チコ「殿下もそう思うでしょう」

どんなセキュリティーなのか。

まず、たった一つしかない出入り口には来館客の重量をチェックするための細長い廊下があります。

博物館に用のある人間は必ずここを通らなければなりません。つまり何人の人間が入って各々の体重は何キログラムであるか自動的にコンピューターに記録されるわけです。

閉館時間になるとは言った人間と出ていった人間の総重量が比較され、もしも両方が一致しなかった場合、館内の総点検が行われます。

チコ「つまり誰かが閉館時間の後館内に潜んでいることは不可能なのです。」

ムーン1「さらにレッドスターが展示されている台もコンピューターに接続されていて重量の変化を警備室に知らせます。誰かが台の上に何かを置いたりレッドスターを取り上げたりしたら警備室のセンサーがすぐさま反応し警備員が飛んでくる仕掛けです。」

ムーン2「博物館の中に潜んでいることもできないしレッドスターに手を触れることもできません。アルセーヌ=ルパンや聖者ことサイモン=テンプラーだってこの状況でレッドスターを盗み出せると思えません。」

チコ「やはり訴訟の準備を……」

ミハイル「待てっちゅーに!」
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