ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:怪奇班事務所ー

転太「さて、何があったか細大もらさず話してもらおうか」

マリア「実は……」

マリアとお熊はここ最近あったことを説明した。

転太「ふむ、巨大なゴキブリのような怪物。そりゃ恐らく平家ゴキブリじゃ。」

マリア「平家ゴキブリ!?」

転太「平家の落ち武者の怨念がたたって巨大化したといわれるやつじゃ。ふむ火を使って倒したか正解じゃ。火はあやつの唯一の弱点じゃからな。火以外は効かん。他のどんな攻撃をしてもへいけ(平気)な顔をしている。」

マリア「(思いっきり突っこみたいところだけど命を救われた手前もあるしなぁ)」

転太「そのさなかに電話を……しかし、わしの所にはかかってこなかった。」

マリア「でも山坂さんですかと聞いたらそうですと答え、すぐ来てくださいといったら、行ってもいいんですか、とすごく意外そうな声を出したんです。」

転太「ふうむ。その間違い電話が暗い波動の原因らしいな。電話機にメモリーが残っとるじゃろう。助手、行って相手の電話番号をかくにんしろ。」

助手「はい」

転太「バリアーを忘れるな」

助手「はいはい」

マリア「こもろ~~♪」

お熊「やめて」

転太「小諸馬子唄なんぞ、よくしっとるのう。」


~~


しばらくして戻ってきた助手さんは電話をリダイヤルしてレコーダーに録音してきたのだが。

『…ただいま留守にしておりますご用の方は…』

転太「留守か」

助手「発信音から相手の電話番号を特定したところ国際電話でインドにかかってます」

マリア「いんど?!」

お熊「あんたいったい何番にかけたのよ」

マリア「なにしろ焦っていたもので。」

転太「インドだと?インドインド…」

マリア「またシャレを考えてるんですか?引導を渡すとかなんとか」

転太「ちゃうわい!わしは学生時代インド神話を専攻しとったんじゃ何か引っかかる。」

資料棚から分厚い本をひとつ引き抜くとパラパラとページをめくる。

マリア「なんです?」

転太「これじゃインド神話の憂鬱の神ヤムサッカサム」

マリア「ヤムサッカサム!?えーと……「山坂さんですか」「ヤムサッカサムさんですか」……不吉なことになんとぁーく似ていますね」

山坂「そうかわかった!お前間違えてヤムサッカサムに電話をかけたんじゃ!山坂さんというのを自分の名前と聞き違えてヤムサッカサムが返事をしたすぐこいと言われてびっくりしたのも当然だ!憂鬱の神を呼ぼうなんてもの好きがいるはずがないからな!恐らく生まれて初めて人間の家に招待されたと思いこんだヤムサッカサムは喜び勇んで日本にやってきた!だから留守になっていたし。憂鬱の元締めが住みついていれば死ぬほどブルーな気分になるのもあたりまえだ!」
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