ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

数日後

リーマンA「ありゃ、また閉まってる今日も休みらしい」

リーマンB「おいおいそりゃないぜ。今日で5日連続じゃないか」

リーマンC「安くてうまくて足湯が気持ちイイこのビストロ温泉が最近じゃ唯一の楽しみだってのに」

リーマンD「臨時休業なら張り紙ぐらいしといてほしいよなぁ。」

リーマンたちがそんな立ち話をしているのをたまたま通りすがった怪奇班の社員が耳にして転太に伝えた。

転太「臨時休業?」

「会社員風の客たちが文句を言ってましたよ」

山坂は妙だなと思った。

お熊は常々「借金を返し終わるまで年中無休で頑張るわ。山坂さんもせいぜい通ってね。」といっていた。

あのお熊が客に無断で休むとは考えにくい。怪奇な物を呼び寄せる厄介な店だ。何かあったかもしれない。

気になった山坂はビストロ温泉へと足を運んだ。

するとどうしたことか……店から大分離れたところからも異様な波動が感じ取れる。

建物の前まで辿り着くと呪文を唱えてサイコバリアーを張った。

さまざまな場所に派遣される家政婦は時に怪奇で危険な現象に巻き込まれます。その原因を調べてスタッフの図るのが任務の彼は一種の霊能力者なのです。

自動ドアも電源が切られているのか反応しない。手動で開けて中に踏み込むも外の比ではない負のオーラがまとわりついてくる。

転太「バリアーを張っていてさえ感じる押しつぶすようなこの暗い波動はいったい……ハッ!?」

中を進んでいると椅子に登ったマリアが首に縄をかけている。

マリア「……」

そしてその椅子から飛び降りた。

転太「おマリ!」

懐からナイフを抜いて投げた。縄を断つとドシャッとマリアは地面へと落下した。

マリア「ぐえぇっ!」

転太「お熊は!?」

見まわすとお熊は床に倒れて蒼い顔でハッハッと苦しそうに呼吸している。転太は慌てて二人をひっつかんで建物の中から引っ張り出して助手に応援の電話をかけた。


~~

怪奇班の事務所まで二人を連れて帰り。

助手「熱いコーヒーをどうぞ」

マリア「ありがとうございます」

転太「気分はどうじゃ?」

お熊「なんだかとてもスッキリしてるわ。ここ数日続いた死ぬほどブルーな気分が嘘みたい。」

転太「あんな暗い波動の中におったら無理もない。げんにおマリは死にかけとった。」

マリア「おかげで助かりました。」
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