ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

マリア「キャーーッ!!」

悲鳴をあげて逃げ出すマリアの背後からはテラテラと輝く巨大なゴキブリのような化け物が追いかけてきている。

マリアを追い回すゴキブリめがけお熊は椅子を振りおろして攻撃を加えるがゴキブリの化け物は相当堅いらしく椅子の方が壊れてしまう。

それでも残った背の部分でガンガンと殴り続けながらお熊が言った。

お熊「おマリちゃん怪奇班の山坂さんに救援を頼んで!」

マリア「わーっ山坂さん山坂さんっ!」

慌てて電話帳をめくってボタンをプッシュする。

『もしもし?』

マリア「もしもし山坂さんです!?」

『そうですが』

マリア「すぐ来てください!」

『えっ行ってもいいんですか』

マリア「急いでお願いします!」

会話が済むと受話器を放り投げて振り向くとあの屈強のお熊がゴキブリに押しつぶされようとしている。

お熊「ああぁーーー!!」

マリア「お熊さんが危ない!山坂さんはとてもまにあわないっ!!」

そのとき目に入ったのは消毒用のアルコールスプレー。あのゴキブリみたいな化け物は脂ぎっているもしかしたら……。

ライターに火種にしてアルコールスプレーを噴射、簡易的な火炎放射器となりコキブリのような怪物は火だるまになる。

『ギャギャー!』

ひっくり返ったあとしばらくはもがいていた足も次第に動かなくなったのを確認して消火器で鎮火した。後に残ったのは丸焼きになった巨大ゴキブリ……。

マリア「ひぇっ…」

お熊「なんとかやっつけたわね。さあ大急ぎで片付けないと開店準備が間に合わないわ。」

所狭しと走り回ったせいでいたるところがぐちゃぐちゃだ。

マリア「今日ぐらいお休みしたい気分ですが」

お熊「何言ってるのよ家政婦協会に借金もあるし、働いた上にも働かなくちゃ。にしても、助けを求めた山坂さん来ないわね。」

マリア「そういえば」

お熊「事務所は車で10分ぐらいの距離なのに……。なにしてるのかしら。」

お熊は自分のスマホを取りだして電話をかけてみた。

転太『もしもし?』

お熊「山坂さん私です」

転太『ああ、お熊か。どうした?』

お熊「どうしたって……さっき救援の電話をしましたよね?」

転太『ん?なんの話だ。電話なんぞもらっとりゃせんぞ。』

お熊「ですってよ」

マリア「ええっ?」

お熊「もしかして番号をまちがえたんじゃないの?」

マリア「かもしれません。えらく焦ってましたから……あっでも山坂さんですかと聞いたらそうだと答えましたが」

お熊「きっとたまたま別の山坂さんにかかったのよ」

マリア「わちゃー」

お熊「まぁいいわ。そんなことよりさあ仕事よ仕事。」
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