ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「……」

チコ「あれ、殿下……。」

ばったりと出くわしたミハイルの顔色はどこかすぐれない。

ムーン1「どうしました顔が悪いですね。いや顔色が悪いですね。」

ミハイル「フウッ」

チコ「あれ、乗ってこない」

ミハイル「気の抜けたギャグはやめろ。ただでさえ気分が悪いんだ」

チコ「風邪でも引きましたか?」

ミハイル「というより、今朝起きた時からなんだか胸騒ぎがするというか……変な感じなんだ。」

そういってミハイルはフラフラと歩いていく。

チコ「はあ」

ムーン1「あんな殿下は珍しいな」

チコ「ですが殿下のカンは当たりますから本当に何かが起きる前触れかもしれませんね。」

ムーン1「まさか」

そのまさかだった。

地球をはなれること数万光年の宇宙空間。

その空間を高速をはるかに超える速度で飛行する物体があった。

スターシップではない。一個の生命体が自身の能力のみを駆使して飛行しているのである。

この生命体こそかの伝説の、いや伝説と呼ぶにはあまりにも血なまぐさい歴史に彩られた銀河系宇宙最悪の存在、最悪にして強大、強大にして最凶の怪獣。

究極の堕落と果てしない残忍さで何万年にもわたって、銀河を恐怖と絶望で包んだ記憶の底から忍び寄る破壊の王。

その名は宇宙怪獣ボツリヌス

ボツリヌスは生命のある惑星を探し求め百年以上かけてすべての生命をむさぼり尽くすのである。

向かっているのは地球だった。


数日後……

ミハイル「……」

チコ「あっ、殿下顔色がもどりましたね。」

ミハイル「わかるか?なんというかイヤな胸騒ぎがなくなったんだ。」

チコ「そうですか」

ムーン1「なにが原因だったんでしょう」

ミハイル「予感めいたものが関係しているような気もするが詳しいことは分からん。何しろ僕はナイーブでデリケートだから」

ムーン1「はあっ?」

チコ「ナイーブでデリケートというより、グローブでバリケードじゃないでしょうか」

ムーン1「確かに」

そしてその夜……

ムーン1「さあ夕食だ」

「「ただいまー」」

ムーン2「あれ?エメラダ銀座に食料を買いに行った連中だ」

ムーン1「えらく遅かったな」

「実は商店街に行列ができていてね。」

ムーン1「行列?」

「みたら新しいラーメン屋だったんだ」

「「へーえ」」
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