ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

マリア「ちょっと待ってください。そのまま尾行するんですか?」

お熊「ええ、着替えてるヒマもないでしょう」

マリア「ダメですよ。通行人がびっくりしますよ。」

お熊「ハッ、自分の破壊的な美しさのことを忘れていたわ。」

マリア「えっ」

お熊「たしかにネグリジェ姿で殿方を悩殺したら日本中の女性に恨まれてしまうわね。おマリちゃんお願いするわ。」

マリア「わかりました。」

あの自信はどこから出てくるのかとため息をついて肩を落とすマリアと疲れてるみたいだけど気のせいかしらと首を傾げるお熊だった。


マリア「はい、砂糖です。」

「ああ、すみません!」

お熊さんのママンにそっくりな女性は砂糖を受け取ると何度も頭を下げ、ありがとう、ありがとうと言いながらどこかへと歩き始めた。

そしてマリアは少し間を置いて後へと着いてく。

しばらくして……

マリア「おばあさんの後をつけたら何だがおかしなところに出てきてしまった。」

東京都内とは思えない霧の濃い荒野のような場所だ。それでもおばあさんを見失わないようにあとを追い続けるが……。

『ホンギャホンギャ、ホンギャホンギャ!!』

マリア「え?」

何か聞こえたような気がして次の瞬間には意識が遠のいてしまった。

そんなことがあってマリアとお熊はアラファト家政婦協会の怪奇班の山坂転太に相談するため店に招いた。

転太「それで?」

マリア「はい、とにかくフワフワしてモヤモヤして気がついらお店の前に立ってたんです。」

転太「フワフワモヤモヤか、お前さんの頭脳が異質な環境情報を処理できなかったのだろうな。そうすると霊界に迷い込んだのかもしれん。」

お熊「えっ、それじゃあのおばあさんは!」

転太「この世のものではない可能性がある。」

「「……」」

転太「じゃがなんだな相談事があるというからわざわざ来てやったのに。この店では茶も出さんのか。」

マリア「あっ、すみません今すぐお茶を」

転太「いや、いいんじゃいいんじゃ。たかがお茶とは言っても湯を沸かしたり茶葉を用意したり手間のかかるものじゃ。そんな面倒はかけたくない。冷でいいぞ酒の方の」

お熊「はぁ?!」

転太「なんじゃい」

お熊「……おマリちゃん、ご用意して差し上げて」

マリア「はい…。」

へそを曲げられても困るので酒を湯呑に入れてテーブルへと置いた。
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