ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「なんで子供たちをとりこんでるんですか?」

フメー「モドキは子供をコレクションしてるんですよ。」

ミハイル「よく知ってるな」

フメー「同じように迷い込んできた小人さんや妖精さんが教えてくれました。ほら」

耳を澄ませると、えーんえーんっと子供の泣き声が聞こえてくる。

チコ「これは……」

フメー「家に帰れない子供たちが泣いてるんです。何とかしてあげたいんですけどどうにもならなくて……ところで殿下たちはなぜここに?」

ミハイル「リアル脱出ゲームだ」

フメー「はあ?」

チコ「実は……」

ここのまでにあったことの経緯を説明する。

ミハイル「というわけで密室から脱出するゲームだ」

フメー「仲間たちもおかしなことを始めたな」

ミハイル「僕もそう思ったコイツらなぜ突然こんなことを始めたんだろうとな。しかしなんとなくわかってきたぞ。」

チコ「と、言いますと?」

ミハイル「まずムーンが密室を作ったがうまくいかなかった。そこでプロを呼んでアマチュアよりずっと難しい密室を作らせたわけだ。」

フメー「はあ…」

ミハイル「その密室空間に不思議な特性でもあったものか結局ぼくはそこを経てもっと不思議なこの世界にやってきた。偶然だと思うか?」

「「えっ?」」

ミハイル「僕は何かに導かれてここに来たんじゃないか。」

チコ「なにに?」

ミハイル「考えられるのは子供を失った親の悲しみ行方不明の子を取り戻したいと考える親たちの必死な願い。何十何百人というその親御さんたちの必須な思いが無意識の集合体となったのではないか。」

フメー「難しいですね。」

ミハイル「子を思う親の気持ちはこの世の何より強い。その強烈な思念がより集まって本気で子供を取り戻そうと考え始めたのだとしたら。そしてそのとき僕を見つけて、コイツなら何とかしてくれるんじゃないかと思ったのだとしたら。そう考えればあるはずのないヘアピンやノコギリが落ちていたのも分かる。思念の集合体が僕をこの世界に導くために与えてくれたアイテムだったのだ。」

フメー「よく分かりませんが…でも要するに子供を取り返したいと願う親御さんたちの願いが殿下をここへ連れてきた……と」

ミハイル「だとすると逢魔刻モドキをやっつけるアイテムもあるはずだが。あった入れた覚えのない御札だ。モドキ覚悟」

札をかかげると閃光が走り一瞬だけ姿を現した不気味な影のようなものが弾け飛んだ。


~~


ムーン1「いやー殿下がいきなりたくさんの子供たちを連れて大広間に出現したときはおどろきましたよ。」

ムーン2「子供たちはみんな無事に家へ送り届けました。」

チコ「密室の壁の向こうの景色も元に戻りましたし。フメー号さんも帰ってきました。」

ムーン1「めでたしめでたしです。」

チコ「殿下は間違いなく今回のヒーローですよ。」

ミハイル「よしてくれ今回の主役は親御さんたちだ。僕はヒーローなんかじゃない。」

ムーン1「なんだか最近殿下がカッコいいんだよな」

チコ「でも、その分大きな反動が来そうですね…」
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