ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「ハンマー……ということは」

おもむろに目の前の壁をコンッと軽くたたいた。

すると、パラッと破片がこぼれたと思うとガラガラと壁が雪崩れの如く崩れ落ちた。その先にはやけに霧が濃い空間が広がっている。

ミハイルはおどろくこともなく、平然と霧の中へと歩いていく。

チコ「殿下!」

咄嗟にチコもミハイルのあとを追う。

その様子を見ていたプロたちだが二人が霧の中に入って一秒も経たず姿が消えてしまった。

ムーン1「消えた」

プロ「嫌な予感がする!みんな逃げろ!」

穴から霧が流れ込んできているのが危険と判断して残っていた全員が倉庫から出て扉を閉める。

ムーン1「今のはいったい……」

プロ「なんというか…異世界に通じる穴が開いたのかもしれない。」

「「「……」」」



霧の中ではチコは叫びながらミハイルの肩を掴んだ。

チコ「殿下っ!!」

ミハイル「なんだ着いてきたのか」

チコ「ついてきたのかじゃないですよ…」

ミハイル「しかしおかしなところだな。」

一寸先も霧で見えない。そして寒くも暑くもない。

「あれもしかして?」

突然、霧の中から誰かの声がした。

ミハイル「ん?」

チコ「え?」

「殿下じゃありませんか!」

霧の中から出てきたのはムーン隊の制服を着ている男だった。

ミハイル「お前は……」

フメー「ムーンフメー号です!」

チコ「フメー号さんていうと何か月か前にいきなり行方不明になった人じゃないですか?」

ミハイル「ああ、他のムーンたちは安い給料でこき使われるのが嫌で脱走したんじゃないかと言っていたな。」

フメー「脱走なんてとんでもない!私はこの世界に取り込まれてしまったんです!」

ミハイル「とりこまれた?」

チコ「ここはいったい?」

フメー「日本の「逢魔刻」みたいなものです。」

ミハイル「お馬がトキ?」

チコ「違います」

逢魔刻(おうまがとき)大禍刻(おおまがとき)は、夕方の薄暗くなる、昼と夜の移り変わる時刻。あの世とこの世の境の垣根が低くなり。

何も知らない子供があの世に迷い込んだりするのだ。

フメー「逢魔刻はいわば事前の超常現象ですがここは違います。悪魔だか妖怪だか知りませんが逢魔刻モドキとでも呼ぶべき存在が作り上げた世界なのです。理屈は逢魔刻と同じです。モドキはこの人工世界をつくって人間、とくに子供たちを取り込んでいるんです。」
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