ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「えっ?リニアダッシュツー?」

チコ「違います。リアル脱出ゲームです」

ムーン1「ご存知ですか?」

ミハイル「聞いたことは有るような気がするが」

チコ「部屋の中にメモや物が置かれていてそれが全部ヒントなんです。たくさんのヒントを解いてどうしたら部屋から出られるのか正解が見えてきます。」

ムーン2「ようするに謎を解いて密室から脱出するゲームなんですよ。」

ミハイル「ふーん、それで?」

ムーン1「やってみませんか?」

ミハイル「えっ?」

ムーン1「みんなで会議室をゲーム用の密室に仕立てたんです。試しに挑戦してみませんか?」

ミハイル「ちょっと待て仕事もしないでなぜそんなことをやってるんだ。」

ムーン1「たまには息抜きも必要です」

ミハイル「お前たちは息を抜いてばっかりじゃないか」

チコ「殿下よりは仕事してますよ」

ミハイル「あぁん?」

ムーン1「まあまあとにかくやってみてくださいよ。」

ミハイル「仕方ないなぁ」

会議室へと向かって、扉を開けてミハイルが入るのを確認して、扉を閉めて施錠する。

会議室内は壁に無数の記号や数字、暗号を書いた紙が貼られテーブルや床にもいろんなものが設置されている。

扉の前でチコが言った。

チコ「何分ぐらいかかりますかね」

ムーン1「いくら殿下でも50個以上あるヒントを解くのに一時間はかかるだろう。」

話していると扉からはカチャカチャと金属が擦れるような音がして、ガチャンと扉が開いた。

ミハイル「……」

「「うそーー!?」」

チコ「たった10秒!?」

ムーン1「わずか10秒でヒントが全部解けるはずが!?」

ミハイル「これだ」

そういってミハイルが差し出してきたのは小さな針金のようなもの。

チコ「えっ?」

ミハイル「落ちてたヘアピンでドアの鍵をあけたんだ。」

「「!?」」

ムーン1「殿下!これはゲームです!」

ミハイル「知ってるとも脱出が目的のゲームなんだから脱出さえできればそれでいいじゃないか。」

ムーン1「しゅ、しゅ、趣旨を理解してない!ああいう態度の殿下をどうしたらいいんだ!!」

ムーン2「もういっぺんやろう!ヒントを解かなきゃ絶対脱出できない密室を用意して殿下を放り込むんだ!」

「「よーし頑張るぞぉーー!!」」

チコ「……」

ムーン3「どうかした?」

チコ「誰がヘアピンを落としたんでしょうか。私は使わないし、皆さんも使わないでしょう?」

ムーン3「言われてみれば確かに?」
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