ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

お熊「ああっ!」

マリア「待て!」

手近にあった灰皿を投げつけると後頭部に直撃した。

『ぎっゃ!!』

反撃に出るかと思いきや、そのまま壁へとぶつかった。だが、ズブズブとめり込んでそのまま外へとすり抜けていく。

マリア「なんと!?」

お熊「不思議な能力を持ってるわりに弱っちー妖怪だわ!全然応戦してこない!」

逃がしてなるものかトドメトばかりに二人は手近にあった棒や鉄パイプを持って外に出たのだが……。

『ひぇーー!』

妖は雲に乗って空の彼方へと逃げ去ってしまった。

お熊「ええっ……。」

マリア「逃げ……ちゃいましたね?」


~~


そんなことがあった翌日、お熊とマリアの元へ仕事を終わらせた転太がやってきた。

そして昨日あったことを終始説明する。

転太「雲に乗って逃げてったー?妖怪が雲になんぞ乗れるものか。そいつはなにか神性のものだぞどんな奴だった?」

お熊「それが…」

マリア「飲み食いして姿を変える変な奴です」

転太「飲み食いして変幻自在!?」

マリア「ご存知で?」

転太「ご存知も何も!それを追いだしたのか!もったいないことをしたものだ!」

お熊「もったいない?」

転太「そいつは間違いなく福の神だ。」

マリア「福の神って……七福神のですか?」

転太「そこまで高位ではではないにしろ福の神の仲間じゃ」

お熊「福の神だなんてとんでもない!二百万円も損させられたのよ!」

転太「だから、座敷童とかでもそうじゃろ。昔からひとが宴会をしていると紛れ込んで勝手に飲み食いをする。見知った顔ばかりなのにどう数えても一人多い。ははーん福の神だなと気がつけばしめたもんだ。ただで飲んだり食ったりさせて損をする……などと思わずに好きなだけ飲み食いさせるんだ。そうするとこの家の人は親切だなと福の神が考えてそこに住みついて福を授けてくれるんだ。最初に損をさせられた額の何百何千倍も返してくれる。」

マリア「……」

お熊「……」

転太「もう少し我慢すれば二百万の何千倍も返してもらえたのにな。おまけに福の神が住みついていれば怪奇なものも近づかなくなっていいことずくめだったのに……追い出したとは」

お熊「どどど!どうして教えてくれなかったの!!」

転太「聞かなかったじゃないか。」

お熊「アーン!大損こいたわぁーー!」

マリア「」しばらく立ち直れそうにないなぁ……。
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