ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

食べてない、注文していないとリーマンたちは口々に主張した。その慌てぶりからして嘘偽りや居直りではない様子だ。

すると……

「あのー、わたしらお隣で飲んでましたが確かに鴨が来てましたよ。うまそうだったけど高そうなのでわたしら注文しませんでしたが。」

という証言が入るとリーマン同士で揉め始めた。

リーマンA「誰が食った!」

リーマンB「知らん!」

「いえ、めしあがってたのは別のお連れの方。」

リーマンD「別の連れ!?どんな!」

「あれーどんなだったかなぁ。サラリーマン風ではなかったような」

リーマンC「サラリーマンでなければ僕たちのつれじゃない!」

「でも仲良さそうに話してたじゃないですか」

「「「……」」」

その言葉にリーマンたちは全員黙って顔を青ざめる。

お熊「もしかして……おぼえがない?」

リーマンA「まるでない」

お熊「わかりました。お代はけっこうです。」

マリア「!」

リーマンA「えっ?」

お熊「イカゲソや魚肉ソーセージの分もいただきません。」

リーマンA「いいの?」

お熊「当店の側に問題があったようなのでサービスさせていただきます。」

それを聞いてリーマンたちは万歳をして店を出た。

リーマンA「ぼったくりどころか気前の良い店じゃないか!」

リーマンB「こんどは会社の人間全員連れてこよう!」

リーマンたちの一団を見送った後。

お熊「ねっ?損して得とれよ。にしても……また現れたみたいね」

マリア「怪奇現象ですか」

お熊「どんな奴だったのかしらおマリちゃんは見なかったの?」

マリア「6つ目のコップを頼んだお客さんだと思うんですが……どんな人だったか全然思い出せなくて」

お熊「やっぱり妖しの存在ね。また現れるかもしれないわね。お互い気をつけて見張りましょう」

マリア「ですね」

ところがその日から三日目の夜、再び異変が生じました。

「おーい勘定してくれ」

マリア「はーい、えーと……16万円」

「はぁ?!」

マリア「お熊さん!まためちゃくちゃ高い伝票です!」

「冗談じゃない!俺たちビール一杯ずつと枝豆にサンマの開きを食っただけだ!どうしてそんな値段になるんだ!」

お熊「でたわね!」

お熊が店内を見まわす。お客さんはたくさんいるが怪しい格好の者や異質な存在は見当たらない。
21/100ページ
スキ