ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ムーン1「殿下のベッドが一億五千万です!」

ミハイル「どうしてベッドがそんなに高いんだ」

ムーン1「調べたら百年前のデンマークの名工といわれた家具職人が三年がかりでつくった逸品だったんです。」

ミハイル「しかしベッドがないと寝るとき困るだろう。」

ムーン1「軍用の簡易ベッドがありますよ。」

ミハイル「なら良し!売れ!!」

チコ「売るんだ…。」

そして、本当に売れるものを片っ端すら売っていき夜になったころには宮殿の中がほぼすっからかんになっていた。

ミハイル「カーテンまで売っちゃったのか」

ムーン1「ペルシャ産の凄く珍しい布地だったんです。値段にすると二億六千万でした。」

チコ「それにしてもさすが王家の調度品、椅子から机まで逸品ぞろいであっという間に売れましたよ。」

ミハイル「とにかく大儲けできたわけだ。気分がいいところで夕食にしよう。」

ムーン1「すぐに用意します」

食事の準備はすぐに済むもテーブルも椅子もうっぱらってしまったので全部軍用の簡易テーブルと椅子が準備された。

ミハイル「椅子も軍用か」

ムーン1「はい」

座り心地は良くないものの腰かけてミハイルはスープを口に運んだ。

ミハイル「なんかうまくないな」

コック「味付けはいつもと同じですよ」

チコ「あっ、そうか」

ミハイル「なんだ」

チコ「殿下は今まで知らずに最高の明朝の白磁で食事されていたわけです。料理の味は食器に左右されるといいますから安いアルミの食器ではまずく感じるのかも」

ミハイル「うーむ、食器でこうも違うものかな」

ムーン1「儲かったんですからそれくらい我慢してください」

ミハイル「それはまぁそうなんだが……」

微妙な晩餐も済んで、床についたミハイルだったが軍用の簡易ベッドは常人でも当然だが寝心地は良くない。

数日も経つと儲かった喜びもどこへやら……。

チコ「殿下、すこし顔色が悪いですよ?」

ミハイル「料理はまずいし夜もよく眠れない。このままじゃ本格的に健康を害してしまうぞ」

チコ「どうします?」

ミハイル「やむをえん。食器とベッドだけでも買い戻そう。買い主と交渉しろ」

ムーン1「はっ」

しかし

ムーン1「殿下たいへんです!食器の買い主が買い値の三倍の値段でなら買戻しに応じるといっています!」

ミハイル「なっ!?」
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