ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

その日は大型の顧客にミハイルが対応していました。

ミハイル「ではロットは来春中ということで」

顧客「契約は完了ですね。しかしなんですなぁ。」

顧客はちらりと部屋の隅に飾ってある一輪挿しを見た。

ミハイル「はい?」

顧客「実は先日、一輪ざしを割ってしまいましてね。」

ミハイル「はぁ」

顧客「代わりを探したがなかなか気にいる品がなくて……しかしあれなどはちょっと面白い。できればお譲り願えませんかねえ」

ミハイル「残念ながら宮殿の調度品はすべて先祖由来の品です。お譲りすることはできません。」

顧客「そうですか……。」

分かりやすく肩を落として顧客が帰っていった。

ミハイル「……調べろ」

チコ「はっ?」

ミハイル「彼は有名な美術品のコレクターなんだ。なんてことのない一輪ざしと思っていたが彼があれほど気にするところをみると値打ちのあるものかもしれない。」

といことで、パソコンで件の一輪ざしについて調べてみると

チコ「先週のロンドンのオークションに似たような品が出品されてます。」

ミハイル「結果は?」

チコ「明朝の白磁で二千万円で落札されました。」

ミハイル「にっ、せんっん、まぁぁんえんっ!ひょっとしてあれもそれくらいの値段でうれないかな?」

チコ「えっ、売るんですか?」

ミハイル「ものは試しだ」

チコ「じゃあ、ネットオークションに出してみましょうか」

それから二時間後

ムーン1「殿下、買い手がつきました!」

ミハイル「ほー、いくらだ?」

ムーン1「三千万円です!!」

ミハイル「さんっぜぇぇんまぁーん!!?」

チコ「それ、流行ってるんですか……」

ミハイル「間違ってるんじゃないだろぉな!!」

チコ「間違ってません。三千万円です。正直、私もびっくりしました。」

ミハイル「なんの苦労もしないで…濡れ手に粟とはこのことだ。」

ムーン1「殿下もしかしたら」

ミハイル「うん?」

ムーン1「ぼくたちが普段つかっている食器はアルミ製ですが殿下のは白い磁器です。一輪ざしと同じようなものだったら?」

ミハイル「売ってみろ!」

さらに二時間後

チコ「食器フルセットが二億八千万で売れました!」

ミハイル「ぼろろろろもうけじゃないかっ!!」

チコ「「ろ」が多いです。」

ミハイル「こんな簡単に儲かるんなら商売なんかやってる場合じゃない!売れるものは何でも売れ!」
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