ー日常ー街の住人達【7】

ー平尾:ビストロ温泉ー

ふにおちないままもう一度休もうとした二人でしたが。

ドドドドドドドドッ!
パオーーーーンッ!

休もうとするとドドドドパオーン、休もうとするとドドドドパオーン、こんなことを何度も繰り返して。

マリア「これじゃ眠れませんよ!」

お熊「ホントねぇ」

マリア「あのガリオンとかいうひと、このことを知っててお熊さんに押し付けたんじゃないでしょうね!」

お熊「そんなチンケないやがらせをする男じゃないわよ。だいいち彼はいったん寝ると近くに爆弾が落ちても目覚めないから、この騒ぎに気付いてないと思うわ。」

マリア「それでよくテロリストが務まりますね……。」

お熊「とにかく風呂敷の中でゾウがあばれているのは確かね。」

マリア「ゾウします?」

お熊「ツッコまないわよ。とりあえず……すぅっ、こらーっ!ゾウ静かにしなさーい!!」

マリア「ッ!!?」

ゾウの鳴き声や足音よりもドやかましいお熊の叫び声。

お熊「反応はいかに?」

風呂敷に耳を傾けていると、かすかに何か音がする。

『……のかー』

お熊「え?」

お熊は聴診器を取りだしてそれを風呂敷に当てる。どっから出したのだろう……。

『誰かいるのかー!助けてくれー!』

お熊「ちょっと聞こえる!?あなたは何者なの!」

『おおありがたい!千年ぶりに外界と連絡が取れた!わしは白魔導士なのじゃが敵対する黒魔導士のためにかつて南極に存在した古代文明の偉大なる魔法使いアプドゥーラのターバンの一部であったこの布に閉じ込められてしまったのじゃ!助けてくだされ!』

お熊「助けるって……」

『簡単じゃ!満月の晩に布に水銀を3滴たらすだけじゃ!』

お熊「今夜は確か満月だったわね。おマリちゃん古い方の体温計をもってきて。」

マリア「えっ、助けるんですか?」

お熊「頼まれてイヤとは言えないのが江戸っ子よ!」

マリア「(江戸っ子が流行ってるのかな。それにしても嫌な予感しかしないなぁ)」

持ってきた古い体温計を折って中の水銀をスポイドで吸い、三滴ほど布に落とした。

ボンッ!と煙が上がってパオーンっと鳴き声が近づいて来る。

『こりゃーっ!ゾウそこをどけわしが先じゃ!』

『パオーーーン!』

『ええい!どかんかいっ!』

煙があがり続けている布の中ではゾウと魔導士とやらが争っているのかドッタンバッタンと暴れている音がする。
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