ー日常ー街の住人達【7】

ー平尾:ビストロ温泉ー

ビストロ温泉にもホール以外でちゃんと個室もあります。

マリア「個室のお客さんは大皿料理でいいんですね?」

お熊「ええ、みんなあたしの友人だから自分たちで取り分けてくれるわ。今日はあたしのご招待ですからね。お代はいただかなくていいの」

マリア「はーい、お熊さんの友だちかきっとユニークな顔ぶれなんだろうな。失礼しまーす。」

個室を開けてみると全身に包帯を巻いたミイラ、ジャミラみたいな人、デス系パンクロッカーみたいな恰好の人……要するに人間ぽさをブッ通り越した化け……ユニークなひと達だ。

パンク「あら、細かいのが入ってきたわ」

ジャミラ「お熊がいってたおマリちゃんじゃない?」

ミイラ「よろしこ」

マリア「は、はは、はい、ヨロシコフー」

どこを見ても人間離れしてるご友人たちの中にひとり40代後半から50前半ぐらいの彫の深いダンディな男性がいた。

ダンディ「だから本当だって、この風呂敷は何でもつつめるんだ」

パンク「そりゃ風呂敷ならなんでもつつめるでしょ」

ダンディ「そういう意味じゃない。ゾウだってつつめるんだ」

「「「ぞう?」」」

覆面「ゾウというと喜久蔵とかじゃなくてあのゾウ?」

ダンディ「あのゾウもこのゾウもそのゾウだ。」

パンク「よっぽど小さいゾウなのね。」

ダンディ「ゾウと聞いて思い浮かべる普通の大きい奴だ。」

「「「ええっ!?」」」

ダンディ「説明しなきゃわからんが、俺がこないだ仕事で中東へいったとき、道端で見るからに怪しい行商人が空飛ぶジュウタンの隣に並べて売ってたんだ」

ミイラ「ちょっと待て中東で風呂敷を売ってたのか?」

ダンディ「大きさがちょうどそれくらいだから俺がそう呼んでるだけだ。本当はなんに使う布か知らんよ、とにかくその商人が」

~~

商人『この布は何でも包めます』

~~

ダンディ「そいってるところへゾウ使いがゾウを連れて通りかかったと思ってくれ」

パンク「思いにくいわねぇ」

ミイラ「中東にゾウ使いがいるなんて聞いたことない」

ダンディ「居たんだから仕方あるまい。そいつが」

~~

ゾウ使い『なんでもってことは、このゾウもつつめるってのか』

商人『もちろんですのこと』

ゾウ使い『ハーッハッハッべらぼうめ!そんな小さな布でゾウがつつめるたあちゃんちゃらおかしくてへそが茶を沸かすぜ!』

~~

ダンディ「中東の江戸っ子だったらしい」

マリア「あのーっ話がどんどん嘘っぽくなるんですけど」

ダンディ「まぁ、江戸っ子は俺の脚色だが」

パンク「よけいな脚色しなくていいから真面目に話しなさいよ」
4/100ページ
スキ