ー日常ー街の住人達【7】

ー平尾:ビストロ温泉ー

お熊「わかってみれば簡単なことだたわね。忍者の水グモとわねぇ。」

水上をすぃーっとアメンボのように移動するマリア。

マリア「ニーナさんが作った特殊樹脂製だから浮力もばっちりですね。」

お熊「どうして思いついたの?」

マリア「昔の時代劇のDVDを見ました。ご存知でしょうか「隠密剣士」というんですが」

お熊「隠密剣士!なつかしいわね大瀬康一役名は秋草新太郎だったかしらこの人、月光仮面もやってたのよね。霧の遁兵衛役の牧冬吉さんは「仮面の忍者・赤影」の白影よ」

マリア「よく知ってますね」

お熊「ハッ!もちろんあたしもビデオ……いえDVDで見たのよ」

マリア「(絶対嘘だ。お熊さんはほんとはいくつなんだろう)」

お熊「さあ!とにもかくにもギリギリで2時間後の開店に間に合ったわ!ビストロ温泉オープンよ!」

温泉とビストロが一体化したというもの珍しい組み合わせに開店と同時に客入りは大盛況だった。

「へー面白い店ができたな」

「会社に近いから便利だ」

「足湯が気持ちいいー!」

「おーい、ビールおかわりー」

マリア「はいはい、お待たせしました。開店記念セール中で生ビールは半額ですからどんどん召し上がってください」

「そいつは嬉しいね。」

「しかしビストロと言いながらこのメニューの数々は……」

お品書きには、あたりめ、塩キャベツ、冷ややっこ、げそ揚げ、モツ煮、おろししらす、おでん、カキフライ、もずく、コロッケ、まぐろ刺、ブリカマ、メンチなどなど……。

マリア「いろいろ考えたんですが最初からお洒落なメニューにして気取ったお店だと思われてもいけませんので。初めはお馴染みの定番メニュー、でもだんだん創作料理やビストロにふさわしいフレンチを増やしていきますのでどうぞご贔屓に」

「なるほど」

「おーい、注文いいかー」

マリア「はーい、今行きまーす。」

「店員の態度もいいな」

「決め手は空調だね。本来なら足湯の湯気が上にのぼってきて頭がボーッとなるはずだが、うまく空調をきかせているので首から上は涼しい風が吹いている。これなら何時間座っていてものぼせることはない。いろいろ工夫しているよ、この店は」

「あの失礼ですが空調関係のお仕事で?」

「いえ、気象庁です。」

「ははあ、だから吹く風に敏感と」

「ありきたりな肉じゃがだが食べてみると……ひと味違って美味い」

マリア「恐れ入ります。隠し味に貝柱のエキスを加えてるんです」

「ふうん、手が込んでるんだなぁ。それでこの値段は安い。」

「ボリュームもあるし。」

「いい店ができた」

というわけで初日から評判は上々です。
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