ー日常ー街の住人達【7】

ー平尾:ビストロ温泉ー

転太の声に他の客たちも次々に反応する。

「そうともそれは幽霊の分泌物から抽出したエキスそのもの!」

「人間が飲みでもしたら生きながら幽霊になってしまうという恐るべし劇薬だ!」

転太「(ほっ、得体の知れぬ連中だけあってよう知っとるわい)」

ラム「符とかいっていたけど、もしその子が幽冥水で造った札を貼り続けているのなら飲んだことと同じ結果を引き起こすわ。」

お熊「それはどういうこと?」

ラム「つまりその子は幽霊になりかけているのよ!」

お熊「そうか!お湯の抵抗を感じなくなったのはおマリちゃん自身の存在が希薄になったからなのね!」

マリア「でっ、でも病気は治るし貧乏神も離れるといわれましたよ!」

転太「あたりまえじゃ!病気の原因になる悪い蟲も貧乏神も幽霊に憑りついていても仕方ないから離れていく、その結果一時的に健康になったり金回りが良くなったような気がするがすぐ幽霊になってしまうから意味はないのだ!」

マリア「ガーーンッ!!」

「ともかく一刻も早く御札をはがすべきじゃないかなぁ」

お熊「そうだわ!おマリちゃん服を脱いで!」

手を伸ばしたお熊だがボンッと何かがおマリの背中から現れた。

御札売り「ダメだよ剥がさせないよ。」

お熊「なんなのコイツ!」

「どうやら勧誘担当の幽霊のようね」

お熊「ええっ!?」

「幽霊とは天国に行けない成仏できない死者の魂のこと。常に強烈な孤独感にさいなまれているから少しでも多く仲間を増やしたいのそのために活動しているのが勧誘担当よ。無理やり自殺させたり事故にあわせたりと手段はいろいろだけどこいつは幽冥水を使うのが得意みたいね。」

勧誘幽霊「ヒッヒッ、ご説明いたみいる。しかし理屈はわかってもお前たち人間は幽霊にふれることも手出しもできない。この子がわしらの仲間入りするのを指をくわえてみているんだな。ヒッヒッ」

などと余裕を見せていた幽霊にお熊にも負けず劣らずの体格の男が近づくと幽霊のローブをひっつかんで憑りついてるマリアから引っぺがした。

「おお、さすがはチベットの奥地で修行して最終解脱しただけのことはある。」

転太「ホントに何なんじゃこいつら…」

ラム「憑具現札」

幽霊に札が貼りつくと半透明な姿から実体化した。

「なめやがてっ!」
「ふとい幽霊だ!」
「袋にしちまえ!」

勧誘幽霊「ギャーーーー!」

お熊さんの不思議な友人たちにボコボコにされて幽霊は逃げていきました。

そのため札がはがれ、おマリは幽霊にならずにすみました。


~~


転太「とんだプレオープンじゃったな」

お熊「ご迷惑をおかけしました。」

転太「何のこれしき暗黒空間のなせるわざじゃ。しかしあの幽霊が暗黒空間に引き寄せられたのは間違いないとしても、君の友人らも同様ではないかね。」

お熊「確かに…政治家や実業家のお友達もたくさんいるのに招待客のリストを作るとき、特殊な能力を持つひとばかりを選んでしまったような気がするわ。」

これも暗黒空間の影響なのでしょうか……。とにかく明日、ビストロ温泉いよいよオープンです。
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