ー日常ー街の住人達【6】

ー平尾:ビストロ温泉ー

御札売り「御札ですよ御札。神社なんかでよく売っているでしょう」

マリア「ああ、昔は年末になると火除けとか盗難除けの神社の御札をうって歩く物売りが出たそうですがそんな感じですか」

御札売り「ま、当たらずとも遠からずです」

マリア「どっちなんです」

御札売り「御札を売っているのは一緒ですがわたしのは神社の御札ではありません。私が自分で作っているんです。」

マリア「帰れ」

御札売り「なにゆえ」

マリア「ものすごく嘘っぽい御札売りが作ったものすごく嘘っぽい御札があてになりますかっ!」

御札売り「ホッホッこれは心外渋谷天外。ほらこれなんか「仙歩風身符(せんぽふうしんぷ)」といいましてね。身体につけるとたちどころに身が軽くなる霊験あらたかな御札です。鳥人と呼ばれた有名なあの棒高跳びの選手も使ってたんです。持ってごらんなさい。」

御札一枚を手に取ったとたん風船のようにマリアの身体、ふわふわと浮遊し始める。

マリア「えっ、えっぇぇ!?」

御札売り「離して」

言われた通りに御札を手放すと重力が戻ってドシャッと地面に落下した。

マリア「痛い!」

御札売り「いかが?」

マリア「痛いといことは夢でもない、すごいっ!ホンモノだ!」

御札売り「もちのろん」

マリア「他にどんな御札があるんです?」

御札売り「なんでもあります。家運が上昇する「吉相金箔符」信用が増す「常実務確符」異性に好かれ「夢想愛撫符」ほかにもハゲが治る「光頭滅却符」試験の成績が上がる「本家天神符」といろいろありますが、中でもとくにおすすめするのは「幽冥符」という仙薬から作り上げたなんにでも効く万能の「幽冥禁邪符」どんな病気もたちどころに治り貧乏神も離れるというありがたい御札です。」

マリア「万能と言うとお湯の中を自由に歩ける効果はありますか!」

御札売り「はん?」

マリア「実はこれこれしかじかでお湯の抵抗をなんとかしないとお店の成功がおぼつかないのです!」

御札売り「そういうことですか…………大丈夫、効果はあります。」

マリア「ほんとうですか!」

御札売り「背中に貼って最初のうちは変化がないでしょうが2.3日たつと効果が感じられるようになります。請け合います。」

マリア「1枚ください!とはいってもあんまりお金持ってないんですが。」

御札売り「お代はあとでけっこう」

マリア「えっ!?」

御札売り「お店が成功してからでいいです。なにしろ人助けのために御札を売っているのでね。ヒッヒッ」

マリア「なんていいひとだろう。」
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