ー日常ー街の住人達【6】

ー広尾:一軒家ー

お熊「『大空襲の時われわれ5人の若い将校は火災を逃れてここに逃げ込んだ。任務がら地下道の存在は知っていたから……その際あとに続いて地下道に避難しようとする民間人の前でわれわれは蓋を閉めた』」

マリア「どうして!」

お熊「『自分たちが助かるためだ。あのままだったら熱波でみんな死んでいた』」

マリア「自分たちだけが助かるために民間人を見殺しにしたのか!」

お熊「『あの時には選択の余地はなかった。だが悪いことはできないものだ。20時間ほどたち火災もおさまったころ、外に出ようとした我々は一様に悲鳴をあげた。太陽の光を浴びた部分が酷い火ぶくれになったからだ。』」

マリア「……」

お熊「『原因は今でもわからぬ。同胞を見捨てた罪で神罰を受けたものか、それとも焼け死んだ人々の怨念なのか。とにかくわれら五人は日光の下で生きられない身体になってしまった。夜も外へ出られぬ何しろ月光も、もとは太陽の光なのだから……。以来われわれはこの狭い一室で生きながらえている。食糧となる地中の虫とさらなる冷気をもとめて地下へ地下へと進みながら。』」

マリア「……」

お熊「『上に住みつく人間の肉をたまさかのごちそうとしながらな』」

マリア「人間まで食べるようになった……。外見がねじくれて変化しただけじゃないわ。私にお熊さんの幻影を見せる能力まで身につけたところをみると、貴様らはもはや人間じゃない!妖怪変化になり果てたのよ!」

化け物『ギシャーーっ!』

もはや正体も隠さず醜い化け物が飛びかかってくる。マリアはファイヤーシェアーのスイッチを入れた。日光よりも鋭い光が化け物を照らし焼く。

隠れていた他の化け物たちもマリアを狙おうと飛び出したが防犯ベルのピンを抜いて投げつけた。ただでさせ狭い部屋の中で劈くような音が反響し、化け物たちは耐えられなくなったのか悲鳴をあげながら穴の中に飛び込んで逃げていく。

マリア「逃がすか!」

縄を穴に投げ込んで伝い降りていく途中にでっかい獣の姿が目に入った。獣じゃないお熊さんだと気がついて、追いかけるのを中断して、気絶しているお熊さんに縄をかけた。

一度よじ登って、縄を引っ張りお熊さんを助け出す。途中、ゴンゴンッとぶつけた気がするが気にしない。

お熊「う、ううん……」

マリア「お熊さん!食べられてなくて良かった!実はこれこれしかじかで!」

お熊「旧日本軍将校の妖怪変化!?そいつらが現況なのね!」

するとお熊さんは近くの木箱をあさりだした。

マリア「なにしてるんです?」

お熊「数十年前の爆発物か、使えるかしら。」

ダイナマイトらしきものを取りだすとそれに火をつける。湿気でやられていないらしくジャーッと導火線を走っていく。

マリア「まさか!?」

お熊は火のついたダイナマイトを爆薬の詰まった箱に投げ込んで、その箱を穴へと落した。

お熊「おマリちゃん部屋の隅へ!」

マリア「ひぇぇっ!」

慌てて部屋のすみへと逃げて身をかがめて耳をふさぐ。

しかし、いっこうに反応がない。

お熊「まだ底へつかない?えらく深く掘ったわね」

瞬間、穴から火柱が上がった、沈下しないかと思うほどの衝撃の後ドドドッと何かがせりあがってくる音がした。

すると穴からお湯が吹きあがった。

マリア「なんですかっ?!」

お湯に混じって怪物の手足も浮き上がってくる。

お熊「妖怪は片付いたわ!おまけにおマリちゃん温泉よ!」

マリア「えっ?」

お熊「付加価値よ!」

マリア「まだここにこだわるつもりなんですか!こんな縁起の悪い物件諦めましょうよ!」

お熊「なにをいってるの都心の温泉付きのビストロよ!絶対に当たるわ!もしそれで付加価値が足りなかったら!」

マリア「足りなかったら!?」

お熊「あたしが犠牲になって女体盛りのサービスを!」

マリア「それはやめてください!」

というわけでわけのわからない展開から「ビストロ温泉」を経営することになったお熊とマリア、さてどうなりますことやら……。
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