ー日常ー街の住人達【6】

ー広尾:一軒家ー

マンホールのふたがずれていることでマリアはピンっと来た。

行動力と好奇心が無駄に旺盛なお熊さんのことだ。夜中に地下室のことが気になり何とかロックを解除して地下を調べにいったに違いない。

そして朝になっても帰ってこないということは……武術とサバイバルの達人のお熊さんを捉えてはなさない「ナニカ」が地下にある言ことだ。

マリア「そうなると私が助けにいかなくちゃならないのかっ!ひえぇぇぇっ!!」

悲鳴を漏らすもそれからの準備は早かった。ヘルメット代わりに鍋を頭にかぶり、首から防犯ベルをさげて右手にはバット、腰にはシュアファイヤーラジオとサバイバルナイフがわりの包丁、足にはゴム長靴。

ちなみにシュアファイヤーはお熊さんの備品のひとつで各国のミリタリーやポリスに採用されている強力な懐中電灯のことです。

今できうる完全装備で準備ができたのでマンホールの蓋を開ける。なんだかエイリアンの巣に戻っていくシガニー=ウィーバーみたいな気分だと思った。

蓋を開けきるが中は真っ暗だ。プリペイド携帯を開いてカメラを起動して腕を中へ突っこんでシャッターを押した。

腕を引っ込めてディスプレイを見ると木箱などが写っている普通の地下室。マザーエイリアンいる気配もなし。

ロープを近くの柱に縛ってマンホールの中へと垂らして意を決してマリアも地下室へと降りた。

中は冷蔵庫でもないのに妙にひんやりしていて何か腐ったような嫌な臭いがこもっている。

さっき写真に撮った木箱には日本の国旗がペイントされている。旧日本軍の物資か弾薬のようだ。

それにしてもお熊さんはどこに……

お熊「……」

マリア「わっ!」

振り向くとそこにはお熊さんが立っていた。驚いた拍子に手に持っていた携帯がパシャっと小さくフラッシュを焚く。

お熊「!!」

マリア「ビックリさせないでください!お熊さんどこに行ってたんですここはいったいなんなんですか!」

お熊「『此の場所は大東亜戦争のおり一朝大事(いっちょうこと)あったときに恐れ多くも天皇陛下と皇族がたをお逃がしするための地下道の一部』」

マリア「ああそんな話をきいたことがあります。皇居を中心に東京中に広がる地下道が掘られたとか……とするとあの扉の向こうには地下道が?」

お熊「『いや残念ながら空襲のさい』」

マリア「有名な東京大空襲?10万人亡くなったという?」

お熊「『その際直撃は免れたが振動でこのあたり一帯の地下道は落盤によってふさがれた、我々も……』」

マリア「我々?」

チラッと携帯を見ると、さっきビックリして思わずシャッターを切ってしまったお熊さんが写ってるはずなのに代わりに不気味な影が写っていた。
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