ー日常ー街の住人達【6】

ーミハイル宮殿:北の塔ー

ツルハシや金槌などで亀裂を叩くと床が「下」へと崩れ落ちていく。地下などないはずの床下には広大な宇宙空間のようなものが広がっていた。

ムーン1「これが異次元か!」

ミハイル「誰か飛び込め!」

「「はぁ!?」」

ミハイル「中に入らなきゃあの二人がどこにいるかわからんだろーが!」

ムーン1「化け物が出たらどうするんですか!殿下が入ってください!」

ミハイル「そんな危ない真似ができるかっ!!」


~~

そのころ階段の踊り場ではシシリアン18号の肩に登り、チコがつま先立ちで必死に手を伸ばすと窓の縁に手がかかった。身をよじらて必死に窓を開閉する。


~~

ムーン2「あ、殿下あそこを!なにか動いてます!」

ムーン3「殿下!穴がひとりでにふさがってます!」

同時にかかる声、ひとつは異次元空間の中で動いた何か、そしてもうひとつは崩して落下していった瓦礫がビデオを巻き戻したようにコドゴトと組み戻っていっている。

ミハイル「動いてるものは二人か!」

双眼鏡を構えて注視すると

ムーン1「まちがいありません!小さな窓かの中にチコちゃんの顔が見えます!」

ミハイル「だがまずい!異次元に通じる穴には自動修復機能があるのだ。だから数年前に生じたひび割れも自然消滅したんだ!いったん穴がふさがってしまったら同じところを掘っても異次元に繋がるとは限らんぞ!早く助けなくては!」

ムーン1「あっ窓からチコちゃんともう一人が身を乗り出した!あぁっ!怪物だ!!」

ウナギに羽を生やしたような大きな怪物が二人に向かって飛翔していく。

ミハイル「ロープとツルハシ!」

ムーン1「は、はい!」

ミハイルはロープをしっかりと自分にまきつけてツルハシをしっかり握ると穴の中へと飛び込んだ。

怪物の頭上へと目標を定めてツルハシを叩きつけた。

チコ「殿下!」
シシリアン18号「殿下!」

ミハイル「ロープに捕まれ!」

「「は、はいっ!!」」

ムーン1「よし、二人もロープを掴んだ!引っ張れー!」

「「「おーーーっ!」」」

ミハイルとムーンたちの連係プレイによりシシリアン18号とチコは無事異次元から救出されました。

それからというもの……

ミハイル「おまえたちは奴隷だ消耗品だー!!」

「「「ハイハイ」」」

ミハイル「……最近妙に素直だな」

チコ「本気でそんなことを考えてたらあの時ご自分の身の危険を顧みずに異次元に飛び込んだはずがないです。」

シシリアン18号「本当は僕たちのことを大切に思ってくれてるんだ」

「「殿下っていい人なんだ」」

ミハイル「…………なんかつまんないよ~~」

偽善者の反対の言葉って知ってますか、偽悪者っていうんですよ。
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