ー日常ー街の住人達【6】

ーアメリカ:メイド喫茶ー

そして長いような短いような一日が終わった。

クライマン「ありがとう、おマリさん」

マリア「いえ、大したこともできなくて……」

クライマン「できれば明日もお願いしたいんですが」

マリア「……ええっ!?」

お熊「おマリちゃん、ちょっと」

マリア「お熊さん」

お熊「ボソボソ(おマリちゃん人道的見地に立って!)」

不治の病、余命いくばくも……その言葉がおマリの脳裏に過った。

マリア「わかりました。」

クライマン「ああ、ありがとう」

お熊「ホーッホッホッ」

あと一日、もう一日だけと貸し切りを承諾しました。しかし、また次の日も、またまた次の日もと貸し切りの日は続いていた。

もちろん、おマリは他のお客さんにすまないとは思うのですが、ときには涙を浮かべながら妹(を演じる自分)を見つめるクライマンさんの心情を察すると貸し切り状態をやめられずに、とうとう連続一週間になっていた。

店の前では貸きりの札を見るたび常連だったお客たちが不満を漏らしていた。

「毎日毎日!」
「どうなっているんだ!」
「ええい、こうなったら無理やりにでも……」

押しはいろうかとぼやいている人ごみを無理やり割って入る一団……。

「痛っ、なんだ!」

黒服「どけっ」

「ひっ!」



店外の騒ぎをよそに中ではいつも通り、クライマンを迎え入れたお熊とマリア。

お熊「あら、クライマンさん。お荷物を入り口に置いといてよろしいの?」

クライマン「ああそのまま入り口の所に…そろそろだと思うのでね。」

お熊「は?」

クライマン「いえ…おマリさん。今まで本当にありがとう。おかげで幸せだったころを思い出すことができました。これでもう思い残すことはありません。」

マリア「ご病気を……覚悟していらっしゃるんですね。」

お熊「?」

クライマンは病気ではないことを知っているお熊が首を傾げると、いきなりドアが蹴破られた。ひと目で一般人ではない、だがただのごろつきでもない集団がなだれ込んでくる。

黒服「クライマン!!」

クライマンは懐から何かスイッチのようなものを取りだしてボタンを押した。それと同時に入り口の側に置いていた荷物が閃光を放ち爆発する。

何人かの黒服が吹き飛んだがその倍の人数が臆せず入り込んできてマシンガンを乱射した。店内は一瞬にして戦場と化す。

マリア「キャーー!」

お熊「なんなのー!」

クライマン「ぼくの両親はある組織のメンバーだった!それでぼくもいやおうなく巻き込まれて悪事に手を染めることに!ところが組織が今度数万人規模のテロを計画していることを知って悩んだのだが自首をすすめてくれた妹が奴らに殺されてしまった!そうなったら組織は敵だ!友人が僕を保護してくれるといったが僕は計画を頓挫させるためにテロの資金を奪って脱走した!大部分は国際的機関に匿名で寄付したが残りはどうせ逃げ切れっこない自分のために使わせてもらうことにした。短い時間だったけれど妹との暮らしを思い出すことができて幸せだった!連中は裏に引きつける!君たちは表から逃げろ!ありがとうおマリさんそしてさようなら!」

マリア「クライマンさん!」

お熊「おマリちゃん彼の気持ちを無駄にしちゃ駄目よ!逃げるのよ!」

お熊はマリアを掴むとクライマンの助言通りに表から逃げ出した。銃声や爆音が聞こえないところまで……そして一時間後、おそるおそる戻ってきた二人が見たものは……。

ポリスA「まさしく血の海だな」

ポリスB「死者十数名です。酷い事件だ」

柏「……クライマンはどうなった。」

ポリスA「酷い有様でした……。」

柏「そうか……。死体は俺が引き取る妹の側で眠らせてやる。」

ポリスB「心中お察しします。」

聞こえてくる惨状にマリアは静かに泣いた。

お熊「おマリちゃん」

マリア「お熊さん…日本に、帰りましょう」

お熊「…そうね潮時かもしれないわね。」

今回は悲しい結末に終わりましたが、でも日本に帰ったふたりはこの辛い思い出を乗り越えて今まで以上にハチャメチャな活躍をすることでしょう。
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