ー日常ー街の住人達【6】

ーアメリカ:メイド喫茶ー

マニュアル通りにやってはいるが水やおしぼりはアメリカにはない風習のようだ。「日本式」を徹底しているらしい。

そうなるとほかのメイドさんも当然マニュアルに従って接客するわけですが……。

マリア「はい、どうぞ」

「あっ、ありがとう」

例えばおしぼりを広げて差し出すとか。

マリア「ご主人様、よろしかったらコートをおかけしましょうか?」

「あっどうも」

店の奥からハンガーを持ってきて用意しておいた小さなブラシでほこりを払う。

マリア「失礼いたしました。」

「はあ……いいっ……!」

日本で仲居さんとして働いていた経験豊富なおマリにすればあたりまえのサービスですがマニュアル通りにしか動けないほかのメイドには真似のできないきめ細かさが人気を呼んで。

「ぜひおマリちゃんに接客を頼みたい!」
「ぼくも!」
「わたしも!」
「俺も!」
「拙僧も!」

マリア「拙僧?」

大評判。そしてさらに……

「しょうがないよ。こういう店で料理の味まで求めるのは無理ってもんさ」

「でももう少しなんとかならんもんか」

という客の不評を耳にすれば、調理場へと足を運び。

マリア「あのーシェフ?」

シェフ「あー?注文かい?」

やる気の「や」の字も感じられない。調理場でたばこをくわえている男がメンドクサそうに返事をする。

マリア「お疲れでしょう。よければ交代しましょうか?」

シェフ「いいのかい。そんじゃちょっくら昼寝でもするか」

マリア「どうぞどうぞ、永久に昼寝しててもいいですよ」

シェフ「ハッハッハ」

調理場をササッと片付けてパパッと料理を作り上げた。

マリア「おマリ特製のミートボールスパゲッティーでございます。」

「ふぅん、カリオストロからこっちミートボールスパゲッティーの味にはうるさいんだよ僕は」

マリア「お口に合いますといいですが」

「ズズッ……うまい!」

マリア「はやっ!」

喫茶店の軽食(カレーやスパゲテッィー、サンドイッチ)などは、とくにメイド喫茶で出すのはそれなりの味というのが普通ですが、一流の料理人でもあるおマリの料理はたいへんおいしく、それがまた評判になって、数日もたたないうちに大行列ができるほどになった。

雇われ店長「うおおおっー長蛇の列!シェフはクビにした!君っ、厨房のほうも頼む!」

マリア「いいですよ」
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