ー日常ー街の住人達【6】

ーニューヨーク:豪邸ー

ミハイルは窓にシーツをはり、それに猛烈な勢いで穴をあけはじめました。

ミハイル「できた!」

おばあさま「これは?」

ミハイル「千年後の星座です!魔神は星の位置で時の経過をはかってるに違いありません!さぁ、見ろ魔神!千年経ったぞ!」

ビンを偽造星空に近づけてフタを捻ると、いとも簡単に開いた。

魔神『もう千年か歳を取ると時間がたつのが早くなる……わーーっ!なんだこれは騙したな!』

魔神は偽造した星座に目を見開いて叫んだ。

ミハイル「だましたがどうした!」

魔神『バカモノ!余はかつて銀河を支配し、次に神になろうとして本当の神に怒りを買いビンに閉じ込められたのだ!千年に一度の約束を破ると神様におしおきされるーー!』

慌てて身体を煙に変えて例のビンの中へと戻っていく魔神にミハイルは叫んだ。

ミハイル「待て!フタを閉める前にどうしておばあちゃんにこういう生活をさせてるのか本当の事を答えろ!」

魔神『いつぞやの小娘か!つつましいささやかな幸せを望んだからその通りにしてやっただけだ!文句があるか!』

言い終わるや否やガチンっと音をたててビンにフタが戻ってしまった。

チコ「ええと……つまり?」

ミハイル「銀河の支配者だったんだ!」

おばあさま「それで!」

ミハイル「我々には想像できないほどの富と権力の持ち主だったに違いありません!つまり彼から見たら現在のおばあちゃんはささやかに幸せなだけなんです!」

おばあさま「私は望んだとおりの物を手に入れたと!?」

ミハイル「そうです!」

チコ「じゃあ、もしかして心配する必要は?」

ミハイル「ない。」

おばあさま「なにも恐れることはなかったのだわ……クックッ。なんて愚かだったのでしょう私は……ホーッホっホッ!」

すべてが理解(わか)り、ミハイルのおばあさまはうなだれたと思ったら大きく笑いだした。

ミハイル「おばあちゃん?」

チコ「だ、だいじょ……」

おばあさま「ウジウジして損したわーー!おかげで人生楽しみそこなったじゃないのさ!いいえ、これからとりかえすわよっ!」

「「えっ」」

歳のいった淑女らしい召し物を脱ぎ捨てたと思ったら、渋谷でバリバリのギャルが着てそうな肌の割合のほうが多い格好へと着替え、ど派手にメイク、豪華に宝石を幾重にもあしらったアクセを身につけ……。

おばあさま「ニューヨーク中のホストを雇いなさい!レジャーよバカンスよ!恋のアバンチュールよ!お金はいくらでもあるのよホーッホホホホッ!」

チコ「うわぁ……」

ミハイル「あああ……おばあちゃんがこわれていく~~」
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