ー日常ー街の住人達【6】

ーニューヨーク:豪邸ー

「医者だ!」

「救急車だ!」

「拳銃を取りだして、いきなり自分の頭を撃とうとしたのよ!とっさに兄さんの手を叩いたから弾丸は逸れたわ!」

「でかした!おかげで頭をかすめただけだ!」

「かなりの怪我だが命に別状はあるまい!」

「気をつけて運べ」

「しかし、社長を解任されてショックなのはわかるが、それでいきなり自殺を図るもんかね。」

「こういう場合、まず何がなんだかわからない状態が続き、それから怒りの時期があって最後に諦めから自殺にいたるのが通常のパターンです。伯父さんの場合あきらかに反応が早すぎます。」

「なにか裏がありそうね。」

「秘書なら何か知ってるんじゃないか?呼んで来い」

秘書「神にかけて、なにも知りませんでございますー!」

「ものすごく怪しい」

「おいよく聞け、エメラダ王朝九百年の間に血塗られた歴史もあったのだ。我が一族は残酷王スペードⅠ世の拷問の秘儀を受け継いでいる。実地にためす機会をうかがっていたのだが……フッフッ」

秘書「しゃべりますでございますー!」

「(根性のないやつだ)」

「(残酷王なんていたのか)」

「(のんびりしたエメラダにそんな奴いるわけないだろう)」

さすがはミハイルの親戚です。


~~


おばあさま「うっ……」

チコ「あ、殿下。お目覚めになりました。」

おばあさま「カシスは!!」

ミハイル「おばあちゃん、伯父さんは大丈夫です。それよりとんでもないことがわかりました。おじさんはグループの根幹(こんかん)企業ヒトフリミコスリサンポール証券で裏操作をしてたんです。」

おばあさま「えっ!?」

ミハイル「独断でギャンブル的な投資を繰り返した結果、巨額の損を抱え込み、その帳尻合わせのためにサンポール証券を敵対するゲフ証券グループに売り飛ばそうとしていたのです。そうなったら悪名高いゲフのことです。グループ全体が乗っ取られてたかもしれません。社長をやめさせて正解でした。」

おばあさま「では…今度も結果的には良い方向に…」

ミハイル「おじさんの処分はおばあちゃんに任せるとして、さっきから気になることをおっしゃってますね。「とうとうこの日が」とか「今度も結果的には」とか……孫として、またエメラダの国王としてうかがっておいた方が良いことがあるのではないですか?」

おばあさま「誰にも話すまいと思っていたけど……あなたになら……ミハイル、魔神の存在を信じますか」
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