ー日常ー街の住人達【6】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

おばあちゃんが壊れてしまった。
その危険性は以前からあったのだろう。

だが、直接の原因を作ってしまったのは僕だ。

悔やんでも悔やみきれない。あの事件が起きたのは二週間前だった。

常春の国にしては珍しく妙に肌寒い陽気が続いた、ある日のこと……

ムーン1「おばあちゃん?誰の」

ミハイル「僕の」

ムーン2「殿下の?」

ミハイル「そう」

ムーン1「おばあちゃん?」

ミハイル「そうだ」

「「殿下におばあちゃんが居たんですか!?」」

ミハイル「あたりまえだろーが!親の親がいなけりゃ僕が生まれるわけがない!そういうひとの存在くらい把握しとかんかバカたれ」

チコ「ニーナさんですよね」

ミハイル「そっちは父方で、今はなしているのは母方の方だ。おばあちゃんは若いころエメラダに留学しておじいちゃんに見初められたんだ。外国人、それも平民の娘が王妃になるというので当時はずいぶん揉めたらしいがおじいちゃんが決心を貫いたそうな。」

チコ「男気のある御仁ですね」

ムーン1「大皇太后陛下は玉の輿に乗られたわけだ」

ムーン2「腰の玉に乗ると何かエッチだけどな」

チコ「コホン」

ミハイル「それ以降我が国の経済はとんとん拍子に推移して平民出の王妃と侮っていた連中もいつかエメラダを守護する女神と敬うようになった。」

チコ「幸せな方ですね」

ミハイル「そうだな。なにしろ18人の子宝にも恵まれたからな。」

チコ「18人!」

ムーン1「めちゃくちゃ多産だな」

ムーン2「そうか!それで殿下にはイトコがたくさんいるのか!」

チコ「確か80人以上ですよね」

ムーン1「長年の謎が解けました」

ミハイル「謎だと思っているなら調べろ、馬鹿者。長男はもちろんわが父ヒギンズ三世、他17人の兄弟姉妹はそれぞれよその王国や公国へ婿にいったり嫁にいったり。中のひとり3男に当たるカシスおじさんは実業家を目指して渡米した。事業を起こしたものの初めのうちは失敗続きところがおばあちゃんを顧問に迎えアドバイスをしてもらったら今度は逆に成功に次ぐ成功で今じゃアメリカでも指折りの実業家になったのだ。」

チコ「へえー」

ムーン1「大皇太后陛下は経済に明るいんですか」

ミハイル「というより先を読む洞察力に優れてるんだろう。コンピューター時代の到来を見越して早くからシリコンバレーの企業買収をオジキに進めたりしたそうだから」

チコ「やっぱり相当経済通ですね」
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