ｰアメリカ:ゴートン邸-

ゴートン「なにが謝恩会だ男と遊び歩いてるのは知ってるんだ。私はな男に貢がせるために苦労して働いてるんじゃないんだ!」

ワイフ「ぐっぅ…」

しばらく暴れ縄から逃れようとしたがついには力なくうなだれた。

ゴートン「はぁはぁ、それにおまえさんがいると彼女と一緒になれない。フランス人の可愛いダンサーだ。一度紹介したかったよ」

するとゴートンは電気毛布で亡きワイフを包んでスイッチを入れた。こうしておけば死亡時刻を誤魔化せる。

そして次に窓を割りワイフの部屋を荒らし始めた。貴金属に現金をかき集め、あちこちに手袋のあとをつけて強盗に見せかける……ここまでやるのに45分、想定通りだった。


同金曜日6時30分……。

打ち合わせ通りの格好でマリアは指定されたレストランへとやって来た。

マリア「いかがでしょう?」

ゴートン「けっこう、瓜二つだ。君、わたしにドライシェリー、妻にはフレッシュジュースを頼む」

ゴートンは近くにいたウエイトレスに注文する。

マリア「あの…」

ゴートン「ここでの食事は本番前のリハーサルと思ってくれワイフになりきる練習をするんだ」

マリア「ああ、はい。でも、お店のひとにバレませんか?」

ゴートン「大丈夫、この店は初めてだ。あとで写真を見せられても間違いなくワイフと一緒だったと証言してくれるさ」

マリア「え?」

ゴートン「いやなに、乾杯しよう」

それから小一時間ほど食事をしてマリアはワイフになりきっていた。

マリア「まぁ、あなたったら、ホホホッ」

ゴートン「(うまいぞ)ちょっと失礼仕事を思い出した」

マリア「どうぞ」

席を離れてゴートンは携帯で会社に連絡を入れる。

ゴートン「もしもしわたしだ」

秘書『社長、今日はお休みでは?』

ゴートン「うむ結婚記念日でね。ワイフと食事中なんだが例の件が気になって、ほら例のM＆Mコーポレーションの件だ」

ゴートン夫婦が仮面夫婦と知っている人間はいない。外では仲の良い夫婦を演じている。

秘書『はあ?うかがってませんが』

ゴートン「いや、たしか一週間ほど前に……聞いてない?弱ったな今日中に処理しないとまずいことになる。わかった、これから行く待っててくれ。」

秘書『分かりました』

電話を切ってマリアの元へ戻ると

ゴートン「想定外の急用だ。一足先に家に帰ってくれ」

マリア「はぁ」

ゴートン「なぁに会社は歩いて十分ほどのところだ。用が済んだらすぐに追いかける。」自宅の住所は記憶してるなタクシーで帰ったら招待客の目につかないようガレージに隠れるんだ」

マリア「わかりました。」