ー日常ー街の住人達【6】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

次の日から楽しい仕事が始まった会社を終えて7時から10時までが抗議の時間。マヌエルは優秀な生徒だったのみこみが早く質問は的確で教えがいのある子だった。

休憩時間にした雑談から2年前にご両親を亡くし叔父上に養育されていることなども知り、また言葉や態度のはしばしからも彼女もぼくに好意を持ってくれていることが分かって仕事はますます楽しいものになった。

ところが、ある夜叔父上の部屋の外で漏れ聞いた電話の内容を知って驚愕した。

伯父『順調に仕上がってますよ。まもなく送れると思います。ついては手付け金として……』

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ヘルムート『マヌエルを売り飛ばす相談だったんだ!』

リスボン『ええっ!?』

ヘルムート『マヌエルは僕から受ける講義のほかに舞踊やら楽器やらいろいろな習い事をしていた。叔父上がみかけによらずやさしい人で、たったひとりの姪に教養を身につけさせようとしているんだと考えていたがとんでもない謝りで本当は中近東かどこかの金持ちに娼婦として売り飛ばすのに教養豊かな方が高く売れるから、つまりは商品価値を高めるためだったんだ』

リスボン『マヌエルさんはそれを知ってたのか!?』

ヘルムート『とんでもない!話を聞いて愕然とするマヌエルをつれてぼくは叔父上に直談判した。人身売買とは何事だと』

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伯父『他人が口を出すことではない!』

ヘルムート『他人も親戚も関係ありますか!これは立派な犯罪です考え直さないなら』

伯父『どうするというんだ!』

ヘルムートは電話の受話器をとり叫んだ。

ヘルムート『警察に通報します!』

伯父『このっ!』

伯父は拳銃を取りだして引き金を引こうとしたが、ヘルムートは受話器を投げつけてその手を弾いた。そしてとびかかり揉み合っているうちに銃が暴発、伯父は即死だった……。

もちろんすぐに警察に連絡した。だがもともと近所で評判の良くない人物でまた人身売買の仮契約書のようなものが発見されたこともあって正当防衛が成立し、殺人罪に問われるずにすんだ。

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リスボン『……』

嘘をついている様子はない。本気の目と生々しい臨場感の語り口にリスボンは生唾を飲んだ。

ヘルムート『これが1度目だ』

リスボン『それから?』

ヘルムート『他に身寄りのないマヌエルを引き取り一緒に暮らすようになってから2週間。マヌエルにもようやく笑顔が戻ってきたある夜のこと……。』
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