ー日常ー街の住人達【6】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

ミハイル「ちょっと待て、するとつまりお前は勤務時間中に勝手に職場を離れたんだな」

リスボン「しかたないじゃありませんか。2人の様子を見たら友人としてほうっておけませんよ。」

ミハイル「それはそうだ。友情は大事にしなくちゃいかん。だが時給は差し引いておく」

チコ「容赦ない…」

リスボン「ホテルについてからヘルムートの連れのマヌエルという女性をベッドに休ませ彼からくわしい話を聞いたわけですが、それが世にも奇妙な物語で……」

ミハイル「はははっ、あったなそーゆーテレビ番組!」

リスボン「ふんいきこわす~~」

チコ「殿下は無視してください」


~~


ヘルムート『その黒髪の人物というのはマヌエルの伯父にあたる人なんだが……僕は彼を三度殺してるんだ』

リスボン『三度殺してるってどういう意味で?』

ヘルムート『比喩じゃないよ。本当に三度殺したんだ』

リスボン『……007は二度死ぬっていうからねぇ』

ヘルムート『信じられないのは当然だ。最初から話そう。ぼくはヨーロッパの大学を出て向こうで、あるベンチャー企業に就職した。仕事は面白かったが新しい会社なので収入は多くなかった。それでアルバイトをすることにしたんだ』

リスボン『へぇ』

ヘルムート『いい仕事を探しているうちに家庭教師の口を見つけた』

リスボン『アルバイトにはもってこいだね』

ヘルムート『それが普通じゃなかった。語学、数学、物理学から音楽、芸術、政治経済の分野に至るまで1人で教えられる家庭教師の求人だったんだ。』

リスボン『それは珍しいな』

ヘルムート『学生時代にひと通りかじったことだからなんとかこなせると思い面接を受けにいった。』

~~

伯父『政治や芸術は独立して存在するものではない。サロンの入選作の傾向は時の為政者の好みに影響されるし』

ヘルムート『印象派も最初は認められませんでしたからね。』

伯父「その通り。個々の専門家の学識は深いが狭いわしが求めているのは歴史上の全ての要素を相関づけて把握するグローバルな知識の持ち主だ。君を採用しよう。わしの姪に君の学識を授け真に教養豊かな人間に育てて欲しい」

ヘルムート『ご期待にそえるよう頑張ります』

伯父『マヌエルご挨拶を』

マヌエル『よろしくお願いいたします。』

~~

ヘルムート『見て驚いた。どんな頭でっかちの学問小僧が出てくるかと思ったら楚々として嫋やかでまるで深窓の令嬢といった風情の』

リスボン『一目ぼれ?』

ヘルムート『そう……いやっ!そういう問題じゃ無くて!』

リスボン『おのろけはいいから話の続きを』
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