ー日常ー街の住人達【6】

ーホテル:スィートルームー

マリア「いきさつはご存知かと思います。皆さん憎い相手をいたぶってスッキリして帰られました。あなたの番です。」

女性「あたしはそんなことのために来たのではありません。」

マリア「っと、おっしゃいますと?」

女性「彼に会いに来たのです。彼を恨んでなどおりません。だって……こんなかわいい子を授からせてくれたんですもの。」

赤ちゃん「ばぶー」

マリア「!!」

女性「詐欺師と聞いた時はおどろきました。でもわたしにはわかるんです。彼は本当はいい人です。きっと昔つらいことがあって心が少しねじ曲がってしまったんです。」

マリア「……」

女性「心の底からの悪人ではありません。そうでなければこんなにいい子が生まれるはずがありませんもの。」

赤ちゃん「あぶあぶ」

マリア「お名前は?」

モニカ「モニカ」

お熊「耐えるのよ!弱音をはいちゃだめよ!」

ジョセフ「もういやだー!いっそ殺してくれー!」

マリア「あの…」

お熊「おマリちゃん、次の人は?」

マリア「ちょっと風向きが変わりまして……結婚詐欺師」

ジョセフ「っ!」

マリア「だそうですね。警察はすごいですよ。あなたのことを全部調べ上げました。子供のころ両親にひどい目にあわされたことなんかもすべてね。」

ジョセフ「……」

マリア「モニカさんという女(ひと)をおぼえていますか?あなたのお子さんを生んだそうです。」

ジョセフ「えっ!」

マリア「でも、彼女はあなたを恨んでいません。あなたを信じているからです。むかしつらいことがあってそれで悪い道に走ってしまった。本当はいい人なんだとね。このままだと彼女は自分一人で子供を育てることになるでしょう。父親のいない子供はどんなふうに育つんでしょう。ねえどうします?自分がつらい子供時代を送ったからって自分の子供を同じような目に合わせるんですか、だとしたら……あなたはご両親と同じ人種ですよ」

ジョセフ「…いやだ、いやだあんな親みたいにはなりたくない!先生治療を続けてくれ!どんなに苦しくてもがんばるから!それで体を治してせめて養育費ぐらいおくってやらなくちゃならない!」

マリア「よくいいました。」

アイマスクをとってあげる。

モニカ「……」

ジョセフ「ああっモニカ!?こっこれはいったい!」

マリア「これまでの罪は苦痛に耐えたということで帳消しということに」

お熊「そうね。被害者はみんなすっきりして帰ったわけだし」

マリア「これから人生やり直すんですよ。モニカさんたちを幸せにするんですよ。」

ジョセフ「あんたたちは誰なんだ!!」

お熊「月よりの使者。ではさらば!」

マリア「月よりの使者とは古いですね。でも今回は少し儲かりましたね。」

お熊「いい傾向だわ」
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