ー日常ー街の住人達【6】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

ミハイル「くそったれどこに居る!」

暴言を吐き散らしながらトイレの隅々まで探し回るミハイル。

ムーン1「クソだのうんこだの…」

ムーン2「まあ場所がトイレなだけに」

チコ「下品」

ミハイル「誰もいない!それどころか音を発する機械的装置のようなものも皆無だ。なのになぜ声が聞こえる!これはやはり狐狸妖怪の仕業か!」

ムーン1「なんです氷のヨウカンって」

ミハイル「ベタなギャグこいてる場合か!ワラを持ってこい!」

チコ「ワラをどうするんです」

ミハイル「決まってるだろいぶしだすんだ!」

ミハイルの号令で真夜中にワラを抱えて走り回るムーンたち。

ムーン3「何の騒ぎ?」

ムーン1「これこれしかじか!」

ムーン3「なんと!殿下!馬鹿にされそうで言わなかったんですが金庫室でも奇妙な声が聞こえるんです!」

ムーン4「地下の発電装置の周辺でもときどき妙な声が!」

ミハイル「トイレが済んだらそっちも調べてやる火をつけろ!」

ワラに火をつけるとトイレ中が煙でいっぱいになる。

『ごほん!ごほごほっ!』

チコ「なかで誰かが咳をしています!」

ミハイル「確認しろ!決して怖いわけではないがぼくは後方から見守っている!」

チコ「怖いんじゃないですか……」

ミハイル「気をつけろよ。いきなりのどぶえに喰らいついてくるかもしれないが恐れてはいかんぞ!」

チコ「怖いなら怖いでいいから黙っててください!!」

改めて煙の充満したトイレを覗くと

トイレットペーパー『ゴホンゴホン!』

チコ「トイレットペーパーが咳をしてます!?」

ミハイル「なぁに芯に仕掛けでも!?」

チコ「ありません!」

ミハイル「狸が化けてるんじゃないのか!」

チコ「ただの紙です!」

ミハイル「ただの紙がどうして咳をするんだ!こんなおかしなペーパーをどこで買ってきた!」

ムーン1「手作りです」

ミハイル「……え?」

ムーン1「古い契約書なんかをですね。煮熔かして透いて、細長く切って芯にまいてトイレットペーパーにしているんです。経費節減のためです。」

ミハイル「道理でごわごわしていると思った。ふくたびにケツが痛いわけだ…………それでわかった!」

チコ「どういうことです?」

ミハイル「つまり、契約書がモノを言ってたんだ」

トイレットペーパー『ごほごほ』

ムーン1「……ああ、そうか元が契約書だから」

ムーン2「書いた物がモノを言うと、はははっ」

チコ「って、本当ですか!?」

ミハイル「事実は小説より真実なり」

チコ「じゃあ、金庫室や発電施設で聞こえる声は!」

ミハイル「応用をきかさんかい。金庫室では「金」が発電施設では発電機のパワーつまり「力」がものをいってるのだ。」

ムーン3「金庫室で聞こえるのはぶきみなうめき声ですよ」

ミハイル「金がうなってるんだ」

「「「えーと…」」」

チコ「日本の小学校のトイレで声が聞こえるのは?」

ミハイル「文部省が国家権力にモノを言わせてるんだろう」

ムーン1「わかったよううなわからないような」

チコ「どうしてそういうモノたちが声を発するのかが分かりません」

ミハイル「だから目は口ほどにものを言いっというのと同じ理屈だ。」

チコ「なるほど……って、やっぱりわからないっ!!」

エメラダではよくこんな不思議な現象が起こるのです。
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