ー日常ー街の住人達【6】

ーM共和国:ホテルー

マックリ「はいっ!」

シルクハットから何かを掴みだす。見えているのは兎の耳…。

ミハイル「やっぱりウサギか、やれやれ」

しかし、マックリが引っ張りだしたのは兎の耳に見えた触覚みたいなものをはやしてヤツメウナギのような吸盤状の口を持った巨大な蜘蛛のような謎の生物。

マックリ「えっ?」

ミハイル「えっ!」

マックリはその気持ちの悪い生き物をとっさに離してしまった。体躯のわりに素早い動きで床を走り回ると、近くにいた店員の顔にへばりついた。

店員「ぐええっ!」

「なんだこれはっ!」

「引きはがせ!!」

ベリバリと聞いたことがないような音に悲鳴。

ミハイル「ちょっと変わってるな」

マックリ「助手!何か仕込んだか!」

助手「とんでもない!それより演技の続きを!」

マックリ「で、では次は……」

シルクハットに再び手を入れる。予定ではハトが飛び出す予定なのだが手にはザワッと毛束を掴んだような感触。引っ張りだすと……。

ひとつ目の獣『ガアァァァッ!』

ライオンの頭にうろこ状の身体を持つ得体の知れない獣が飛び出してくる。

ミハイル「おおっ!」

興味を惹かれるミハイルをよそにM共和国のSPにひとつめの獣が喰らいついた。

SP「ぎゃあああっ!」

他のSP達が銃を抜いて発砲するが鱗に弾かれ傷ひとつつかない。その間にひとり、またひとりと食いつかれていく。

ミハイル「お、面白いーーーー!!こういう気の利いたイリュージョンは大好きだ!もっとやれー!」

演出だと思い込んでいるミハイルだが、目と鼻の先でバリバリと人間が食べられていく……。

チコ「殿下のご機嫌が直ってきました。このまま続けてください」

大臣「は、はぁ……」

「だ、大臣!!」

大臣「なんだ!」

「先ほどの地震の原因が分かりました!郊外で核融合プラントで爆発事故があったんです!」

大臣「なに?!」

「核エネルギーの大規模な流出によってプラント近辺は壊滅状態!科学者の話では流出したエネルギーの影響で我が国のどこかに「次元の穴」が発生する可能性があるそうです!「次元の穴」とはすなわち3次元と異次元の間の壁に生じるキレツのことで!」

大臣「ちょっと待て……アレか?」

マックリ「ひえぇぇっ!」

シルクハットからは肉色をした無数の触手状の物が溢れんばかりに放出している。

SP「う、うて!うてーー!」

ついにはマシンガンを持ちだして乱射するが一本、二本を撃ち抜いても10.20とおぞましい数の触手が飛び出てくる。

そしてついには近くにいる人間に攻撃を仕掛けだした叩きつけ貫き締め潰す……。

もちろん最前列で見ていたミハイルにも魔の手が襲い掛かる。

ミハイル「おっ!おおおっ!いやー、迫力があるなぁ!!」

さすがと言おうか人間離れした動きで触手の攻撃をかいくぐり阿鼻叫喚の地獄をみて大笑いする。

マックリ「ひぇぇっ!」

そして逃げ出そうとしていたマックリの足にも触手が絡まったかと思うと突如、触手の束がシルクハットの中に沈みだした。

映像の逆再生でも見るように飛び出したモノたちがシルクハットの中に戻っていく、しかし、同時に触手に捕まったままのマックリや他の人間たちも一緒に吸い込まれてしまった。

「大臣!幸いエネルギーの流出はくい止めたそうです!」

大臣「そ、そうか。」

ミハイル「いやー、見事な消失トリックだ。デビット=カッパーフィールドもこれほどあざやかに姿を消すことはできまい。」

チコ「どういうタネでしょうね。」

大臣「エネルギーが途絶えて次元の穴が消えた。つまりミスター=マリックは……永遠に消滅してしまった。」

ミハイル「大臣!すばらしいマジックショーでした!あそこまで歓迎されたら契約しないわけにはいかない2割で手を打ちましょう」

大臣「やむをえんですな…」

ミハイル「ところでミスター=マックリが見えないようだが」

大臣「旅に出たのでしょう」

ミハイル「どちらへ?」

大臣「西方浄土といいますから西の方角でしょうか。」

ミハイル「面白いことを言う。それでは、ハッハッハッ」

大臣「……被害者の数は?」

「およそ数万名」

大臣「数万の人命と引き換えに契約成立か……はあぁぁ。」

ミハイルのいくところ騒動つきものというお話。
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