ー日常ー街の住人達【6】

ーバレンタイン邸ー

ケネス『しかし結婚生活がいまでも続いてるとしたら……これは心理学的な分析になるがボビーは無理やり自分を変えたのかもしれない。』

マリア「といいますと?」

ケネス『財産目当てというカレンへの負い目、せめて家庭生活を円満に送らなければ奥さんに済まないという思いから身体だけでなく魂にも脂肪をまといギラギラした自分を封印したんだ。』

マリア「そんなこと…いやでも、実際……」

ケネス『とするとボビーは太り続けなくちゃいけない』

マリア「えっ!?」

ケネス『やせたら魂もむき出しになりウルフとあだ名されたころのボビーに戻るだろう。そうなったら結婚生活がどうなるか……』

マリア「……」

ケネス『絶対痩せさせちゃダメだ!!過去のボビーを復活させるんじゃないぞ!!』

マリア「え~~~~と」

とは言ったもののなすすべもなく二週間目……。

お熊「あら、おマリちゃん暗い顔してどうしたの」

マリア「イ、イエ……。ボビーさまは?」

お熊「感心な生徒よ。何も言わないのに自分から筋トレやってるわ。」

サウナスーツを頭からすっぽりかぶりトレーニング器具を一心不乱に動かすボビー氏。

マリア「ボビーさま、あまりご無理をなさらない方が……」

ボビー「やかましい」

ああ、フランケンシュタインの復活に立ち会ってる気分。

そしていよいよ三週間目。

マリア「どうなりました!」

お熊「しらないわここ数日フードをかぶりっぱなしだから結果は見てないの。」

マリア「どーなるのかしら……」

そうこうしているうちに奥様の乗った車が到着した。物陰から様子を見ていると……。

カレン「……」

庭師「へっへっ、奥様、お耳に入れたいことが…なあにすこしいただけりゃ」

例の性質の悪い庭師が携帯を見せようとした瞬間、横合いから鉄拳が飛んだ。

ボビー「ドブネズミが」

劇的ビフォワーもまっさお、まるで別人になったボビーだ。

カレン「ボビー!?」

マリア「お熊さんどうしましょう!ウルフがもどってきました!」

お熊「むむっ」

ボビー「もうやめだ。自分を押し殺すのは飽き飽きだ。」

マリア「奥様申し訳ありません!ダイエットのせいでこんなことに!」

カレン「よくやったわ!」

お熊「え?」

カレン「あたしは太って優しいだけの男と結婚したんじゃない!昔のあなたが帰ってくるのを待ってたのよ!!」

ボビー「いいのか、今までのようにはいかん、俺の生きたいように生きるぞ」

カレン「それでこそボビーよ!」

ボビー「よーし久しぶりに単車をブッ飛ばすか」

カレン「連れてって!昔みたいな命懸けのツーリングに!」

お熊「……結果オーライ」

マリア「ですね」

奥様からたくさんの謝礼もいただいて、終わり良ければ総て良しなふたりなのでした。
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