ー日常ー街の住人達【6】

ーバレンタイン邸ー

ボビー「いやぁ、驚いたな。本当にマシュマロそっくりじゃないか。」

中に案内されたのはいいが広い邸宅のわりにひとの気配がまるでない。

マリア「なんだか人気がないようですが」

ボビー「義理の父とワイフは今朝、南仏にバカンスにいったんだ。執事もメイドも使用人全員を連れてね。」

マリア「ええっ!?」

ボビー「南仏の別宅はここより広いから人手が必要で」

マリア「いえ、問題はそこではなく…っで、ご主人はひとりで残ってなにをしておいでで?」

ボビー「見ての通り掃除だよ」

マリア「ご主人様が掃除?留守番ですか?」

お熊「おマリちゃん」

お熊さんが耳打ちしてきた。『義理のお父様つまりご養子』と

マリア「ああ……。ずいぶん冷遇されてらっしゃるようですね」

ボビー「はははっしかたないよ。名目上義父の会社の重役になってるけど仕事は何もしてないし、ただの役立たずだから」

マリア「(達観してるのか人生諦めてるのか)」

お熊「(他人の家の事に関わっても仕方ないわよ。)」

マリア「こほん、ではさっそくお料理に取り掛かりますのでお台所お借りしますね。」

ボビー「いやあラッキーだなあ。ハッハッ、たまたまワイフが出かけてる時にたまたま昔あこがれてたマシュマロそっくりの女性が現れて手料理を作ってくれるなんて」

お熊「思い出を懐かしんでいただくためにサービスさせていただいてます。マシュマロさんとは仲がよかったんですか。」

ボビー「まさか、僕はバイトに明け暮れる貧乏学生。彼女は学園のアイドル。高嶺の花に一方的にあこがれてただけさ、でも一度だけその他大勢と一緒にパーティに招かれて、ご馳走になった彼女お手製のミック=ジャガー美味しかったな。」

お熊「……肉じゃが」

ボビー「そう、ミック=ジャガー」

お熊「んん?」

ボビー「ミック=ジャガー風ミートローフ。ベーコンの代わりに豚の背油を使っていてね。なんともふくよかな味わいだった。」

お熊「…………(肉じゃが、にっくじゃが、ニック=ジャガー?!)」

マリア「お待たせしました。」

作り終えた料理、玉ねぎと人参とジャガイモと牛肉を炒め煮込んだ「肉じゃが」をボビーの前に置く。

ボビー「ん?」

マリア「え?」

ボビー「これは?」

お熊「ジャパニーズ!!ミック=ジャガーですどうぞ召し上がれ!!」

マリア「え?ニック?」

ボビー「日本風だとミートローフもこうなるのか」

スプーンでひとすくいして肉じゃがを口に運ぶ。

お熊「……」

ボビー「むぐむぐ…ん?全然違う!!」

お熊「っ……」

ボビー「でも美味しい!」

お熊「おおっ、神よ!」
8/100ページ
スキ