ー日常ー街の住人達【6】

ーアメリカのとある郊外:安モーテルー

タライに張った石鹸水の中でゴツイ腕が洗濯物をかき回している。

洗い終わって水のしたたる布をひと振りすると一瞬で水がはじけ飛ぶ。剛腕スゴイ。

マリア「お熊さん、パン粥ができましたよ。」

お熊「はーい」

質素な食器にパン粥とこれまた質素なコップに水を注いだだけのディナー。

マリア「もらってきたパンの切れ端を水で薄めた牛乳で煮込んだんですが、結構いけるでしょう?」

お熊「まぁ、飢え死にしなくては済むわね。日本に帰るお金はおろかまともな食事もできやしない。」

フッ、大きなお鼻から豪快に空気が漏れる。

マリア「むぐむぐ」

お熊「それというのも前回稼いだおゼゼをおマリちゃんが全部返しちゃうから」

マリア「またー過去の話はやめて明るい未来を語りませんか?」

お熊「未来より明日の生活の保障が欲しいのよ」

マリア「お熊さんならどこでも生きていけますよ」

などといっていると電話がなった。

お熊「ここの電話番号を知ってるのは!もしもし?日本から!?アラファト家政婦派出協会!?繋いでちょうだい!お熊です。はい…はい…わかりました。やったわ貧乏生活ともおさらばよ!」

マリア「なんです?」

お熊「あちこち電話するお金もないから本部に仲介を依頼してたの。最初に代理奥様をやった例のビンセントさん。彼の大学時代の同級生がゲットできたの。本物のマシュマロさんに憧れてた人で彼女の手料理を食べて一日だけふふ気分を味わいたいそうよ。」

マリア「手料理?」

お熊「得意でしょ」

マリア「それはまぁ。でもアメリカの料理は知りませんけど。」

お熊「大丈夫、彼のお好みはなんと……肉じゃが!」

マリア「はあ?どんなアメリカ人なんですか?」

お熊「さあ、でも本人がそういってるんだから」

というわけでヒッチハイクを繰り返してやってきました。

マリア「うわっ凄いお屋敷ですね。」

世界の大富豪紹介にでも出てきそうな豪邸。

お熊「いいわねぇ。お金がうなってそうで。」

チャイムを鳴らすとリゴーンッと豪華な音。そして少しして出てきたのはモップ片手にエプロン姿の太めの男性。

大太りの男「はーい、どなた?」

お熊「ご主人はいらっしゃるかしら?」

大太りの男「僕ですが」

マリア「えっ」

大太りの男「マシュマロ!!」

お熊「えっということは本当にご主人さま?!依頼主のバレンタインさん?」

ボビー「ボビーと呼んでください。さあ入って」

マリア「ボビー=バレンタインどっかで聞いたことある様な……」
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