ー日常ー街の住人達【6】

ー高級マンション:リチャードの部屋ー

朝日が窓をさし、ベッドに横になっているリチャードが目を覚ました。

マリア「おはよう」

リチャード「おマリ!昨夜は素敵だったよ。まるで夢を見ているようだった!」

実際、夢である。

すると、早朝でもあるに関わらず叩き壊さんばかりのドアノックからの返事もまたずに飛び込んでくる中年の男。

秘書「第一秘書です!坊ちゃま大変です!」

リチャード「いったいなにごとだ!」

秘書「一部の人間しか知らないグループ企業全体の裏帳簿のデータを何者かが財務局に密告した模様です!!」

リチャード「なんだって!!」

秘書「全データが昨夜財務局に送信されたのです!脱税の事実を掴まれたら我がグループは破滅です!!」

リチャード「誰がそんな真似を!!」

マリア「酷いことする人がいるものね!」

すると、さらに人が駆け込んでくる。

第八秘書「第八秘書です!そのニュースを聞いたショックで大旦那様がお亡くなりに!」

リチャード「なんっ?!」

さらにさらに……

弁護士「弁護士です!遺言状を確認したところ大旦那様には隠し子が28人いることが判明しました!!グループ全体の総資産と個人資産の大部分が財務局に没収されました!!残った個人資産を相続人に分配しさらに負債を差し引くと一銭も残りません!ぼっちゃんは破産です!!」

騒がしかったのもつかの間、報告を済ませた秘書も弁護士も自分の保身に走らなければならない。そして、金の切れ目が縁の切れ目よろしく、リチャードとの上下関係など続けているはずもなく……。

マリア「あっというまに誰もいなくなったわね。」

リチャード「おマリ…」

すがるように声をかけてくる。しかし、マリアの態度はとても冷たかった。

マリア「あたしももう用はないみたいですね。さようなら」

全てを無くした男からはまやかしのマドンナも消えていく。

後ろ姿に声をかける気力も力もなくソファーに座り込み、数時間。数時間ではあるが長い長い絶望の時間がたった。

そこにコッコッと誰かがノックをした。

リチャード「誰だ一文無しに何の用だ」

「あなた」

その声を聞いてバッと顔をあげる。そこには調停中の妻の姿。

リチャード「おまえ!」

「おマリという女性が来て事情を説明してくれました。そして頂いたものをあなたに返して欲しいって。再出発のための元手にして欲しいって……二人でやり直しましょう」

リチャード「あっ……ああっ……!!」


~~


お熊「もったいなかったわね。」

マリア「あのままもらっいっぱなしだったらきっとすごく後味の悪い思いをしましたよ。」

お熊「しかたないわね。次のカモからせいぜいふんだくりましょう」

マリア「まだ続けるんですね……」
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