ー日常ー街の住人達【5】

ー最上階:レストランー

リチャード「おかしな所を見せてしまったね。」

マリア「愛じ……ガールフレンドがたくさんいらっしゃるのね。」

言葉を濁してマリアはいい直した……のだが。

リチャード「ガールフレンド?ハイエナさ」

マリア「は?」

思わず声が出てしまった。

リチャード「女性に対して失礼な言い方かなでも本当だ。離婚話を聞きつけてやってきたんだ。高齢で病弱な父がなくなればぼくが遺産を相続する。みんな妻の後がまに座るのが目的だ。」

マリア「……」

リチャード「僕が一文無しだったら誰も近づいちゃ来ないさ。自分の男性的魅力を過大評価はしてないんだ。」

皮肉っぽくしかし、どこか小馬鹿にしたような顔で笑うリチャード。

マリア「調停中の奥さまは?」

リチャード「彼女だけかもしれないな僕をひとりの人間として愛してくれたのは……無欲な女性でね。僕が資産家の息子でなくても結婚してくれたと思うよ。」

マリア「その奥さまを悲しませた。」

リチャード「……」

マリア「財産目当てと知りながらその財産を餌に女性たちをもてあそんで……きっとあなたのそんな姿を見るのがつらくて奥様は離れていったんでしょう。あなたにガールフレンドたちをハイエナ呼ばわりする資格はありません。」

リチャード「きついなぁ」

言い終えてからハッとした。なれない服装にお化粧をしたせいか気が強く出てしまったのかもしれない。

マリア「ごめんなさい。いい過ぎました。」

リチャード「マシュ…いや、おマリ」

マリアはとても居づらくなり席を立った。

マリア「あなたとの契約は1週間ですがお気に触ったならキャンセルなさっても結構です。」

リチャード「おマリ五分だけ待ってくれ。」

マリア「えっ……はい」

立ったのはいいが呼び止められてしまい席についた。リチャードは携帯電話を取りだして離れていく。

恐らくキャンセルの連絡だろうけど、されたらお熊さんに怒られるだろうなぁ……。

リチャード「マンション地下のショッピングアーケード、モカジェリーにつないでくれ。……ああ、もしもしギヤマンだ。こないだ見せてもらったセット。結局買わなかったやつ。アレを大至急最上階のレストランへ持ってきてくれ。」

それから五分後……。

「お待たせしました。」

リチャード「うむ。おマリ、これを」

差し出されたのは小箱。それもどう見ても高級なブティックのもの。

マリア「えっ?」

リチャード「ズバリ痛いところを突いてくるのはマシュマロと同じだ。久しぶりにガツンとやられたよ。君に不愉快な思いをさせたのなら僕の方こそ謝る。これは謝罪の気持ちだ。」

マリア「でも…」

リチャード「ほんの心ばかりの品だよ。キャンセルなど言わずあと六日よろしくたのむ」

マリア「は、はい…。」
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