ー日常ー街の住人達【5】

ーアメリカ:どこかの空港ー

あれから二週間後、本当にアメリカに渡ったマリア。

マリア「わっすごい!」

お熊「なぁに?」

マリア「外国人ばっかりです」

お熊「今どき珍しい反応ね。さっ、移動するわよ」

マリア「ふぁーい」

空港から向かった先はお高そうなマンションだった。

お熊「今回のお相手はこの高級マンションにひとりで住んでる。リチャード=ギヤマンさん。ご実家は執事が5人もいるという超大金持ち。言わずと知れたボンボンでプレイボーイ。奥さまとは現在離婚調停中で原因はもちろん女性関係。」

マリア「……」

お熊「最初のお客様としては理想的だわ」

マリア「どのへんが?」

お熊「いいこと?離婚問題でゴタゴタしてる最中に……最中(もなか)じゃないわよ最中(さいちゅう)」

マリア「わかってますよ」

お熊「昔の憧れの女性とデートしたいなんて正真正銘の女好きよ。話の持っていき方次第でいくらでも絞り取れるわ。」

マリア「絞り取るって。私たちの仕事はお客さんに夢を与えることじゃないんですか」

お熊「お客様には夢をそしてあたしたちにはオゼゼという名の夢を」

マリア「アーナンテユメノアルハナシナンダロウ」

お熊「皮肉言ってないでさあお化粧よ」

ほぼ全身メイクを受けて格好もわりとごってりしたドレスに着替えて、マンションの一室のチャイムを鳴らす。

「マシュマロ!!」

出てきたのはプレイボーイと言われただけの事はある長身のイケメン青年。

マリア「えーと……」

リチャード「…じゃないんだよね。本当に別人なのかビンセントの言った通り瓜二つだ。」

マリア「おマリと申します」

リチャード「とにかく入りたまえ」

マリア「失礼します」

このときマリアは、「あっあたし英語喋ってる。お熊さんスゴイ」ということを考えていたのだった。

それはさておき、ソファーに案内され体面に座ると彼は気さくに話しかけてくる。

リチャード「学生時代は君とこんな風にふたりきりで話すチャンスはなかったな。抜け駆けされないようにみんなでけん制しあってたからな。リンクスを覚えてるかい?君とビンセントの結婚が決まったとき、首を吊る吊らないの大騒ぎで……ハッ」

マリア「……」

リチャード「すまない。完全にマシュマロと混同している。」

マリア「いえ、昔のことを懐かしんでいただいてそれで少しでも幸せな気持ちになっていただくのがあたしの役目ですから。」

リチャード「ああ、やっぱり違う。マシュマロならそんな言い方はしない。彼女はもっと勝気だった。マシュマロはいうなれば女王様、太陽だったが君は例えるなら月だ。日本女性らしい淑やかさ僕は君の方が好みかもしれない」

マリア「(きた~!プレイボーイ~~……)」
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