ー日常ー街の住人達【5】

ーホテル:一室ー

マリア「いきますっ!」

ドアを蹴破り中になだれ込むと……

「あら?」

ベッドの上でキャミソール姿の女性。それはマリアと瓜二つなマシュマロと呼ばれる奥さまだ。

ただ、乱暴されているとか拘束されているではなくワイン片手にのんびりしているのだ。

ビンセント「縛られて怖い思いをしてると心配してたのになんなんだそののんきな様子は!頼むからどうなってるのか説明してくれ!!」

若者「ハッ」

すると奥から若い男性が顔を出した。

ビンセント「おまえがテニスのインストラクター!この事件の犯人か!」

若者「犯罪者扱いは心外ですね。」

マシュマロ「そううよアナタ失礼よ。この人はとても立派な人なのよ。」

若者「野菜だけでは旨みにかけるからおたくの野菜丼は牛肉のエキスを使っている。」

ビンセント「よく知ってるな。その通りだ。」

若者「米国産の牛肉エキスだ。」

ビンセント「もちろん。」

若者「今だ安全性の確立されていない米国産牛肉の輸入を我が国政府は賢明にも認めていない。だが野菜丼チェーンがエキスを大量に消費することになれば、それは形を変えた米国産牛肉の輸入消費に他ならない。安全じゃない食品を日本国民とくに抵抗力のない子供に食べさせるのは犯罪行為に等しいし、その計画を推進しようとするあなた方こそ犯罪者と呼ばれるべきだ。」

お熊「日本の食文化を憂える憂国の士ってわけ?」

若者「いかにも」

マリア「そこでまず奥さんをたきつけ協力させて記者会見を中止させようとして、それに失敗すると脅迫状で脅しにかかった。憂国の士らしからぬ悪質なやり方ですね。」

若者「おいおい、君を敵に回すつもりはないよ。君は豚丼を支持してくれたからね。」

マリア「え?」

マシュマロ「彼は日本人の食生活を心配しているの、真剣な態度に共感したから協力したのよ。仕事にかまけてあたしをほっておいたあなたへのあてつけもあったし。」

ビンセント「いや、それは……」

マシュマロ「あたしがいなくなったら心配するんじゃないかと思ったらよく似た役者なんか雇って記者会見やっちゃうし」

ビンセント「いや、だからそれは……」

マシュマロ「あたしを愛してないのね!!」

ビンセント「愛してるよ、ダーリン!!」

マリア「……お熊さん、豚丼を支持してる私は敵に回すつもりはないってどういう意味でしょうか?」

お熊「なにか胡散臭いわね。」
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