ー日常ー街の住人達【5】

ーホテル:廊下ー

お熊「お疲れ様でした。」

ビンセント「うむ、おかげで会見は大成功だった」

マリア「みたいですね」

ビンセント「なぜか知らんがみんなえらく感心しているようだったな」

マリア「どうしてでしょうね。」

ビンセント「おマリ、今後の打ち合わせもあるし今晩一緒に食事をどうかね。」

マリア「(お熊さんどうしましょう!これってデートのお誘いですよ!)」

お熊「すみませんが……」

マリア「ほっ」

お熊「時間外手当をいただきますが」

ビンセント「それはもちろん。」

断りを入れてくれるのかと思いきや、後押し件料金の相談である。

マリア「お熊さん!!」

お熊「お仕事よ。もっと上品に言えば、おゼゼのためよ。おケツぐらい撫でられても拒んじゃダメよ。減るもんじゃないんだから。」

などと、他人事だと思って結局食事をする羽目になった。

好きでもない、しかも自分の倍は年上の男にケツなんか撫でられたらしばき倒してしまわないかと内心思っていると不意にテーブルに置いていた自分の手に、ビンセントは手を重ねてきた。

ビンセント「おマリ」

反射的に手を引っ込めていった。

マリア「あの…奥様をお探しにはならないの」

ビンセント「別に、いずれ戻ってくるよ。駆け落ちは初めてじゃない」

実に軽い。それは卑下するようではなく本当に軽い発言だった。

マリア「えっ」

ビンセント「この前はプロゴルファーその前はどこかの大学教授だったかな。ひと月もすると飽きて帰ってくるんだ。いつものパターンだよ。」

マリア「それを認めてらっしゃるのずいぶん寛容なのね。」

ビンセント「仕方ないさ。なんといってもあれだけの女性だ」

マリア「……ゴクッ」

あれだけ?どれだけ?っという言葉が喉元まで来たが何とか飲み込んだ。

ビンセント「大学時代から彼女は太陽だった。いつも周りにたくさんの月、崇拝者を従えてね。ぼくもその一人だったわけだが男子学生は皆、彼女にまいってた。あの美貌とグラマラスな肢体、なにより男心をとりこにする女性的魅力。マリリンモンローの再来という奴もいたがとんでもない。モンローなんか目じゃないよ。」

マリア「……」

ビンセント「彼女にそっくりの君にこんなことを言うのもおかしな話だがね。自分がどんなに持てるかどれほど男性に破壊的な魅力を発揮しているか十分知っているだろうからね。」

自分でチャラケて美少女だのなんだのはいうが、ぶっちゃけそこまでのものではない。アメリカ人の趣味は分からないものだ。
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