ー日常ー街の住人達【5】

ーホテル:VIPルームー

お熊「いかがでしょうか」

少し化粧をして、口元に着けぼくろを足して、エクステで髪を少し伸ばし、高級なドレスを身に着けたマリア。

「おお!これは驚いた。マシュマロそっくりだ。よく短時間でこんなに似ている女性を……」

マリア「マシュマロ?」

ビンセント「妻の大学時代からのあだ名だよ。白くてふんわりしているから。ビンセントだ。」

自己紹介しながら右手を出してくる。マリアはその手を握った。

マリア「おマリです。よろしく。」

ビンセント「(マシュマロの手より柔らかい)そろそろ時間だ会場へ。」

マリア「あのー」

お熊「えっ?」

マリア「私の手を握って頬を赤らめたのが気になるんですが」

お熊「男の人は純情だから……。それに愛人を作るのでも奥さんに似たタイプを選ぶというし。気にいられたんじゃないの?」

マリア「はいぃっ?!」

お熊「それはそれでそのままにしておかなきゃだめよ?よく似た女性を探せといわれたのに子供を連れてきたとバレたらアメリカ人の事だから契約違反で謝礼を値切るかも知れない。値切られないために絶対に子供とバレちゃダメ」

マリア「は、はぁ…」


~~


会見が始まりマリアは喋らないようにしてビンセントの隣で席についていた。

ビンセント「……っと、以上が出店計画の概要ですが子供のころに食べた日本発信のビーフボール「牛丼」のおいしさにインスパイヤーされて開発したベジタブルボール「野菜丼」を「早い安いうまいさらにヘルシー」のキャッチフレーズで牛丼の祖国日本の皆様にご紹介できるのは大変名誉です。」

進行係「ここまでで質問がある方はいらっしゃいますか?」

「奥様は野菜丼はお好きですか?」

マリア「(考えたらなんの打ち合わせもしてない。野菜丼なんか食べたこともないし。)わたしは豚丼が好きです。」

ビンセント「(おマリ!!)」

しかし、会場はドッと笑いで包まれた。

「我が国大衆の食事情に詳しいところを見せて返す刀で未だ米国産牛肉の輸入を禁止している政府を皮肉っている。」

「さすが米国人実業家の奥さんだ。エスプリの効いた回答をする。」

また、今度は女性の記者から質問があがった。

「奥様がお美しいのは野菜丼を召し上がっていらっしゃるからでしょうか」

マリア「お熊さんのおかげです」

化粧や服のメイキングは全てお熊がしたものだったので、マリアはそのまま素直に答えてしまう。

「オクマ酸というとやっぱりオレイ酸の仲間ですか?」

マリア「お令さんをご存知ですか。そうですお熊さんの仲間です。」

このマリアが言った「お令さん」とは家政婦のひとりなのだが元家政「夫」で、まぁ要するにお熊さんのお仲間の方だ。

「野菜丼には美容に効くオクマ酸が含まれているのですね。わかりましたありがとうございます。」

「(オクマ酸?なんだそりゃ)」
「(初めて聞いたが他の連中は知ってるみたいだな)」
「(オレも知ってるフリしとこう。)」
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