ー日常ー街の住人達【5】

ーホテルプラチナ:ラウンジー

フランク「そうだ、カクテルだな。」

北斎「カクテル?」

フランク「泊まったホテルのバーで家内のために用意してくれたんだよ。そういえばあれ以来、飲んでいないな。生きていれば今回連れてきてやりたかったよ。」

北斎「そうでしたか……残念です。どうぞごゆっくり」

フランク「うん」

一礼して北斎は受付の方へと戻っていき……。

北斎「検索して」

絵里「えっ?」

北斎「「家内のために」僕がバーテンダーなら奥さんにちなんだカクテルを用意する。身に着けてるものとか香水のブランドとか、特に合わせやすい。」

七津川「「夜間飛行」!」
絵里「「夜間飛行」!」

北斎「うん」

七津川「奥さんが付けていた香水が夜間飛行?」

北斎「おそらく」

絵里「えっと「夜間飛行」「カクテル」……っと」

パソコンで検索をかけるとバーナーとカクテルの画像が表示される。

三人は声をそろえていった。

「「「ビンゴ!!」」」


~~


その夜、フランクが泊まっている部屋のドアがノックされた。

「フランク様」

フランク「何か?」

「コンシェルジュからのサービスでございます。寝酒(ナイトキャップ)にお召し上がりください。」

フランク「寝酒(ナイトキャップ)」

トレイに乗っているのは二つのグラスに注がれたカクテルと香水の入った小瓶が添えられていた……。


~~


翌日、受付の前を通りかかったフランクは七津川に声をかけた。

フランク「やあ」

座っていた七津川は立ち上がって礼儀正しく腰を折って挨拶をする。

七津川「おはようございます。」

フランク「おはよう。昨晩はありがとう。以前来日した時飲んだのはあのカクテルだよ。間違いない。」

七津川「そうですか良かったです。」

フランク「妻のものと二人分、粋なことをしてくれるじゃないか。……で、教えて欲しいんだが…。」

七津川「はい?」

フランク「添えてあった小瓶に入ってたのは「夜間飛行」。懐かしい妻の香りだ。」

七津川「……」

フランク「あのカクテルもそれにちなんで作ってくれたものだが……私は夜間飛行の話など誰にもしていない!あまりに不思議すぎるじゃないか、恐怖すら感じるよ。」

七津川「そうですね……私もこんなことができる人間を他に知りません。」
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