ー日常ー街の住人達【5】

ーホテルプラチナ:受付ー

北斎「……っということが、昨日ありまして」

絵里「和みは昔から凄く縁起とか迷信とか気にするから」

北斎「心理学では「迷信行動」という用語があってね、「行動」と「結果」に因果関係がないのに好ましい「結果」を期待して特定の「行動」を繰り返す行為を言うんだ。」

絵里「ふーん」

話していると控室から紙袋を持った七津川主任が出てきた。

七津川「一条さん、じゃあこれ新しいパンフレットやチケットね。」

絵里「あっ、はい。それじゃあ先に出張所にいってきますね。」

北斎「あっ、うん」

七津川「気をつけて」

先にいった絵里を見送ると北斎は言った。

北斎「七津川主任。こちらのコンシェルジュで扱うのは観光案内だけですよね?」

七津川「ええ、なにか?」

北斎「いえ、コンシェルジュ業務ってもっと雑多なものかと思いまして。」

七津川「本来はそうみたいですね。でもそうすると業務内容が煩雑になりすぎますし……観光案内もこれはこれで奥の深い仕事なんですよ?」

中年男性「ちょっといいかな」

七津川「はい、どうぞ。おかけになってください。」

中年男性「ふ~~……今日みたいな気分の時…何を食べたらいいか、どっかいいところない?」

北斎「……」

七津川「……お外でお召しあがるつもりでいらっしゃいますか?」

中年男性「うん、そのつもりだけど」

七津川「おひとりで?」

中年男性「うん」

七津川「明日のご予定は?」

中年男性「え?うーんホテルでゆっくりしようかな……」

北斎「……」

七津川「ではトルコ料理は如何でしょう?中目黒のお店ですが週末にはトップベリーダンサーのショーが模様されています。」

中年男性「へぇ!いいね!そりゃ面白そうだ」


~~


七津川「外に食べに行かれるというのですから、ため息はお疲れが原因ではなくホテルの中にあるレストラン和・中・フレンチは除きます。となるとご退屈なさってらっしゃるのだと推察できますから単に食事をするだけではご満足いただけないでしょう。男性おひとり明日のご予定もないとおっしゃるので多少、夜更かしになりますがセクシーなショーを楽しめるレストランをご案内しました。」

北斎「…素晴らしい。心理学者は廃業ですね。」

七津川「お客様に出来る質問は多くて三つまでです。その三つでお客様の心ご理解しないといけません。」

北斎「理解…か…」

七津川「……」

ふと、七津川の方へ視線を向けると軽く腰を振っている。ベリーダンスのことを考えているのだろうと、これは簡単に理解できた。
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