ー日常ー街の住人達【5】

ーロンドン大使館ー

ロンドン大使館にはミハイルの彫像がいくつか飾られている。みょうちくりんなポーズを取っているだけでも腹立たしいのだが、文字が掘られていて【エメラダの良心】というふざけたタイトルなのだ。

その彫像の直線状にある窓の前まで移動してミハイルは言った。

ミハイル「よし、このへんだな。ゴッシュマン号、このガラスを割ってみろ。」

ゴッシュマン号「えっ、いいんですか?」

ミハイル「かまわん」

ゴッシュマン号「あとでガラス代を請求されるようなことは」

ミハイル「いいからやれ!」

ゴッシュマン号「せーの」

先ほどと同じように木槌でゴッシュマン号がガラスを叩いた。

すると、外にある彫像と同じ形に割れたのだ。

Lムーン1「ああっ、ガラスが彫像の形に!」

ミハイル「やっぱり!」

チコ「結局、どういうことですか?」


~~


ミハイル「いいか、ガラスを通過する光の透過率は百パーセントではない。どんな無色透明のガラスでも98パーセントくらいのものだろう。ということは」

「「「ということは?」」」

ミハイル「残り2%はガラスの中に情報として記録されるのだ。」

チコ「はあ?」

ミハイル「つまり、ガラスの前に三角形を置いておくとしよう。長い間こうしておくと通過しきれない2%の映像がガラスに染みついて、目には見えなくても三角が情報として残像するのだ。分かりやすく言うとずっと同じものを見ていたガラスが、それを記憶するという事だな」

Lムーン1「なるほど、だから毎日ボールを見ていたガラスは円形に彫像を見ていたガラスは彫像の形に割れたわけですか。」

ミハイル「ゴッシュマン号がたたいたからな」

ゴッシュマン号「……」

ミハイル「彫像の前にあった別のガラスだ。焼き肉のタレ、割ってみろ。」

チコ「…………はい」
コォン!
ミハイル「誰がぼくの頭を叩けといった!」

チコ「間違えました。」

改めてガラスを叩いたが粉々に割れてしまうだけだった。

Lムーン1「普通に割れましたね。」

ミハイル「あたりまえだ。誰にでもできることではない。」

チコ「というと?」

ミハイル「「奇跡の手を持つ男」の息子の波動(バイブレーション)を発する手でなければできない芸当だとコンピューターが弾きだしたのだ。」

「「「おおっ!」」」

ゴッシュマン号「……」

ミハイル「(ふふっ、面白いことになりそうだ。)」
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