ー日常ー街の住人達【5】

ーホテルプラチナ:スタッフルームー

北斎「ちょっと何考えてるかわからないところはあるけどいい人、調子がいい人、口のうまい人、「他の人はどういってる?」実はこの質問で返ってくるのは答える本人の本音なんだよね。」

七津川「……」

北斎はパソコンを操作してさっき訪れた会社を検索する。

北斎「インターナショナル。資本金一億四千万……もともとは携帯用コンテンツの制作会社……」

七津川「北斎さんはそんなに的場さんが気に入らない?」

北斎「はい」

七津川「私も何回かあったことがあるけど…ニコニコして感じの良い人じゃない?」

北斎「ニコニコそうですか……あれ笑顔に見えましたか…」

七津川「え?」

お茶の準備をしていた手を止めて北斎を見る。

北斎「あの男、仮面をかぶったままなんです。人は笑う時に通常、口→目の順で笑顔になるんですがあの男はいつも口と目が同時に笑います。つまり作り笑顔。いつでもどこでも子供にもお年寄りにも一条さんに対しても」

七津川「……」

北斎「初めて会った時からおかしいなと思ってたんですよ。一条さんも本心では信用してないと思うんです。信じるのかと聞いた時、質問が帰ってきたことからも分かります。」

七津川「……」

北斎「こういうケースは難しいんだよな……一番いいのは傾倒してる対象の人物から引き離すことなんだけど……」

七津川「あなたの洞察力は素晴らしいですが……容赦がありませんね。」

北斎「はい?」

七津川「私たちの仕事はひとの心を見透かすことではなく、想いを理解することから始まります。それを忘れないでください。」

北斎「…………」


~~


ー白金:レストランー

絵里「わぁ!素敵なキルト!」

巨大な額縁に収められているキルトはとても細かく丁寧な仕事で作られていて素人目で見ても高級な品だ。

的場「アメリカのアンティークキルトだって」

絵里「これどうしたんでいか?」

的場「僕は足立区でも同じようなプロジェクトを手掛けててね。そこの手芸店の人にもらったのさ。僕が持ってても仕方ないし、ここに飾ってもらった方がキルトも喜ぶだろ?」

店長「なかなか洒落てるじゃないか」

絵里「ありがとうございます」

的場「うん。あっ、そうそう、それでね。今日はビジネスの話を持ってきたんだよ。」


~~


その夜、また商店街のひと達を集めて集会をした。

「投資?」

絵里「うん…。的場さんの会社に出資する人を集めてるんだって本来なら一口100万円からなんだけど、ここの皆は45万円から出資してくれた人から随時エキサイティングストリートにお店を出してくれるって…」

「その的場さんっのなんとかってのはもうできてるんでしょう?」

絵里「うん、見せてもらった…」

「あたしたちそういうのは分からないからねぇ」

「絵里ちゃん決めてよ」

絵里「……」
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